「あー」
「島根方言集成」で最初に登場することばは「あー」です。意味、わかりますか。
出雲弁がよくわかっていると思っていた、私にもすぐには、意味が思い浮かびません。
「島根方言集成」には次のように書かれています。
「あー ①ある。②会う。出雲」
確かに、と納得です。私が使っていたのはこんなふうです。
「そこにあーがね」とは、「そこにあるよ」という意味で、よく言っていたように思います。「あーに行くけんね」とも言っていました。これは②の「会いに行くから」と言うことを伝えるために使っていたことばです。
「島根方言集成」を手にする川上正夫君(山陰中央新報より)
川上君は、2007年頃から「土地ごとに、消えることなく生きてきた言葉がある。方言は『暮らしの言葉、言葉の民衆芸術』と、方言が失われない」ことを願って準備を進めてきたそうです。
私が、「出雲蕎麦ふなつ」で、この本を紹介されたとき、一番に引いたことばは「はしま」です。
小学生だったころのわが家は、農家が15軒ほどが集まる集落(周囲は全て田んぼ)の離れ家を間借りして住んでいました。農繁期と言われる田植えの頃、秋の米の取り入れの頃には、友達と一緒に手伝いというか農作業中に近くで遊んでいて、「はしま」を一緒に食べさせていただいたことを思い出します。
午後の農作業では、午後3時頃になると短い時間ですが、持参した大きなヤカンの番茶?を飲みながら、重箱いっぱいに入ったむすびや漬物や簡単な煮染めなど食べ、雑談をして休憩をします。
その時休憩しながら食べること「はしま」と呼んでいました。麦ご飯を食べていた私には、白米のむすびが食べられることは、忘れることのできない思い出です。
ですから、「はしま」ということばが載っているか、気になったのです。もちろんありました。次のように説明されています。
「昼食と夕食との間食。出雲。大田市。邑智郡美郷町・川本町・邑南町。江津市・浜田市。」
出雲だけのことばかと思っていましたが、石見地方でも使われていたようです。後で川上君に尋ねると「主に石見で使われていた」と教えてくれました。
書くのが遅くなりました、「島根方言集成」は、出雲地方の方言だけでなく、島根県全域、つまり出雲地方、石見地方、そして隠岐地方で使われていることばを集成していますので、訳の後に必ず、どの地域で使われていたことばかが、きちんと書かれています。
これは大変な作業だったはずです。よくぞまとめたものと、わらためて感心します。
私には、もう一つ気になることばあります。
「ばんじまして」です。このことばを読んで、どんなイメージが浮かびますか。
「ばんじました」は、外での農作業を終え、日が落ちうす暗い時期に頃帰宅途中ですれ違った人たちが交わすあいさつの言葉です。
私の記憶どおり、昼間の「こんにちは」と暗くなってからの「今晩は」との中間的に時間帯で夕闇がせまる頃から暗くなるまでのごく限られた時間帯で使われたことばです。広島には、こんな時間帯で使われるあいさつことばがあるのでしょうか。
こんな微妙な時間帯を使い分ける言葉を持っているのが出雲の人たちです。なんとも言えない思いのこもったことばだと忘れるいことの出来ない懐かしいことばです。
「島根方言集成」を手にして、懐かしい出雲のことばを思い出しながら、小さかった頃の遊び回っていた懐かしい頃を思い出しています。
いのちとうとし
[お願い]
この文章の下にある《広島ブログ》というバナーを一日一度クリックして下さい。
最近のコメント