原発避難計画はどう変わるか!? 「スフィア基準」というのをご存知でしょうか。
スフィア基準、正式名称は「人道憲章と人道支援における最低基準」で、国際赤十字などが1998年にまとめました。給水・衛生、食料、避難所、保健医療の4分野にわたり、最低限の基準やその目的、効果を記載しています。紛争地帯の難民救済が目的でしたが、災害避難者へと運用が広がりました。約400㌻に及ぶものです。「避難所の質の向上を考えるとき、参考にすべき国際基準」として扱われています。
昨年の能登半島地震がきっかけで、昨年11月、政府はこの基準を受け入れることにし、年度内に指針(ガイドライン)を明らかにすることにしました。
スフィア基準による具体的な主な内容は、避難所を必要とする事態が発生した場合、確保するトイレ数ですが発生当初は「50人に一つ」、災害発生中期には「20人に一つ」とし、女性用を男性用の3倍にすることも求めています。トイレカーの普及なども踏まえ、目標を高めることを検討しているとのことです。
一人当たりの専有面積も、スフィア基準では3・5平方㍍(たたみ2畳程度)とするとしています。自治体によって状況が違うために、一律化できないというのが理由です。スフィア基準の3・5平方㍍でも狭いという意見もあります。何年か前に広島県内の自治体に対し、アンケートを実施しましたが、回答はマチマチでした。
避難を担当する政府機関は内閣府防災担当という部署ですが、昨年12月13日、「自治体向けの避難所に関する取組指針・ガイドラインの改定について」というものを出していますが、トイレや専有面積だけでなく、食事の質や生活用水の確保についても書いています。能登半島地震のとき輪島市では、キッチンカーや仮設入浴施設が活用されていました。
能登半島地震後の避難所
また、昨年10月原子力規制委員会の検討チームは、原発事故時の5~30㌔圏内自治体の屋内退避の目安を、「3日間」とすることを明らかにしました。規制委の原子力災害対策指針では、事故時は5㌔圏の住民はすぐに30㌔圏外に避難する。5~30㌔圏内に住民は自宅や避難所などで屋内退避をし、放射線量が基準を超えた場合は30㌔圏外へ避難をすると定めています。その屋内退避の目安を3日間としました。
3日間の理由は自治体や政府の持つ、水や食料の備蓄量から計算されています。屋内ですから屋内にとどまるのが基本ですが、物資の受け取りなどの生活に必要な一時外出はできるとしています。
規制委の方針が取りまとめられたことに、全国の原発関係自治体からは、原発事故と自然災害が同時に起きる「複合災害」への備えが不十分などとした懸念が出されています。
毎日新聞が今年1月、原発が立地する13道県に実施したアンケート調査の分析記事が掲載されていましたが、自治体からは次のような意見がありました。新聞記事を掲載します(2月8日付け)。
青森県→自然災害を前提とした議論を検討してほしい
宮城県→複合災害では自然災害で物資が枯渇するなど、一概に目安通りにならない可能性もある
静岡県→屋内退避の継続には個々の住民に応じた物資や環境が必要。十分な準備と理解が不可欠。住民の負担軽減に活用したいが、丁寧な説明と理解が必要
茨城県→屋内退避中のライフラインの確保に、具体的な方針を示すこと
島根県→3日間の目安にとらわれず屋内退避が必要な期間継続できるよう、国の支援が必要
福井県→(事故予測の)判断が困難だと性急に結論付けず、議論を継続してほしい
新潟県→住民への説明に活用する
原子力規制委員会の報告書案は修正がなされて、この3月中には示されることになっています。
木原省治
[お願い]
この文章の下にある《広島ブログ》というバナーを一日一度クリックして下さい。
« 栗原貞子作「原爆で死んだ幸子さん」―その2 | トップページ | 栗原貞子作「原爆で死んだ幸子さん」―その3 »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 原爆被害を調べる人のためのガイドブック「ヒロシマ調査・研究入門」(2025.04.29)
- チェルノブイリデー座り込み(2025.04.27)
- 「屍の街」の章題―つづきのつづき(2025.04.28)
- 「屍の街」の章題―つづき(2025.04.26)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- チェルノブイリデー座り込み(2025.04.27)
- チェルノブイリ原発事故から39年(2025.04.25)
- 三原地区の4月の「19日行動」(2025.04.22)
- 府中地区 4月の「19日行動」(2025.04.21)
- フクシマを忘れない!さようなら原発ヒロシマ集会実行委員会が中電へ要請書を提出(2025.04.11)
コメント