ヒロシマとベトナム(その66-1)
「昭和100年」と父
今号から“日本が無謀な戦争へと突き進み原爆投下と敗戦に至った経過”、“日本軍のインドシナ進駐”、“父の戦争体験”について書き進めることにします。
1928年(昭和3年)3月24日生まれの父は間もなく97歳を迎えます。父の生まれた1928年は初めての普通選挙が実施された年であり、同時に関東軍による張作霖爆殺事件があった年です。大正デモクラシーの一つの果実としての普通選挙と、ヒロシマ・ナガサキにつながる「昭和の戦争」に踏み込んだ年です。大変なコントラストですが、「父の人生」は「昭和100年」とほぼ重なります。
明治維新以降、富国強兵政策を進めてきた日本は、1877年(明治10年)の内戦(西南戦争)を経、1894年(明治27年)に日清戦争、1904年(明治37年)日露戦争に勝利します。勢い躍り出た日本は、ロシア帝国から割譲した遼東半島などの権益を守る関東軍を配備。帝国主義国として植民地政策を進めます。
でっち上げと謀略による大陸侵略
1931(昭和6年)年9月18日、関東軍は柳条湖事件を自作自演し、中国軍との戦闘を始めます。いわゆる「満州事変」、日本軍は戦火を中国本土に拡大させます。そして、1932年1月には上海の共同租界で日本人僧侶が殺害される事件を口実に、日本海軍陸戦隊が3月にかけて中国軍と衝突する上海事変を起こします。高まる排日運動と満州事変・満州国成立などへの批判をそらすための関東軍による謀略でした。
陸戦隊は民衆の中に紛れている平服の中国軍(便衣隊)の銃殺を布告し、銃や日本刀などで武装した日本人自警団も加わり、「便衣隊狩り」と称して中国人住民を虐殺しました。犠牲者は上海市社会局の発表によると6,080人の住民が殺され、2,000人が負傷し、1万4千人が行方不明になっています。
傀儡国家「満州国」から日中全面戦争へ
翌1932年(昭和7年)3月1日、日本軍が占領した満州、内蒙古、熱河省を領土として日本の傀儡国家「満州国」が作られます。ご覧になった方も多いと思いますが、「ラストエンペラー」は、満州皇帝となった愛新覚羅溥儀(あいしんかくらふぎ)の生涯を描いた映画です。
1933(昭和8年)年3月27日の国際連盟総会で「日本の侵略行為」とするリットン調査団報告が、賛成42、反対1(日本のみ)、棄権(シャム=タイ)という結果で採択されたのを受け、日本は国際連盟を脱退します。
1937(昭和12年)年7月7日、北京近郊の盧溝橋で中国軍との衝突が起こります。「夜間演習中に実弾が撃ち込まれ、兵士一人が行方不明」になったことを中国側からの攻撃として判断して起きたとされていますが、定かではありません。いずれにしても中国軍との全面戦争に入る口実として日中戦争の契機となります。
こうして日本は国際社会から孤立深め、言論・結社・表現の自由を奪う一方、戦時世論を掻き立て太平洋戦争へと突き進んでいきます。その結果、310万にも及ぶ犠牲者とヒロシマ・ナガサキの悲惨な結果を招いたのです。
この時代を知らない私は、「何でこのような愚かで無謀な道を歩んだのか」と思ってしまいます。後世に歴史として、ことの「正邪曲直」を知った者として、現在において再び「愚かで無謀な道を歩もうとしている」事態に臨む姿勢が問われていると痛感します。
(2025年2月5日、あかたつ)
【編集者】届いた原稿が少し長めですので、あかたつさんの了解を得て今日、明日の2回に分けて掲載します。
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