国際シンポジウム「グローバルに核被害をとらえ直す」
11月30日午後1時30分から広島国際会議場で、広島市立大学平和研究所、中国新聞メディアセンター、長崎大学核兵器廃絶研究センターの3団体が主催する国際シンポジウム「グローバルに核被害をとらえ直すーいま改めて『ノーモア・ヒバクシャ』」が、開催されました。
この国際シンポジウムは、毎年この時期に開催され私も何度か傍聴してきましたが、これまでは、核をめぐる情勢を中心のシンポだったように記憶していますので、あまりピタリとくる内容ではなかったような印象が残っています。
今年は、タイトルに「グローバルに核被害を」とありましたので、少し期待を持って参加しました。シンポジウムを終えての感想は、それぞれの立場で、世界の核被害者に向き合おうとする思いを感じました。
特に市立大学平和研究所のロバート・ジェイコブズ教授の基調講演「核兵器の開発・保有という暴力 グローバル・被爆者の視点から」は、興味深く聞くことができましたので、少しだけその内容を紹介します。
最初に、核兵器の影響(爆風・熱線・放射線)について解説。特に放射線の影響の中で、広島では黒い雨に象徴されるフォールアウト(放射性降下物)による健康への影響を強調されました。それは次に続く、核実験による被曝に繋がる指摘です。「1945年から2121カ所で核実験が行なわれ人類は何百万単位で放射性降下物にさらされた。928回の核実験が行なわれたネバダ核実験場では風下に500万人が居住して被曝。大気圏核実験由来のフォールアウトは、全米に広がっている。その影響は、300年続く。旧ソ連のセミパラチンスク核実験場でのフォールアウトでは、150万人が被曝したと推計できる。」と、核実験による被曝の実態について政府調査統計などを示しながら具体的に説明されました。その後、核兵器製造の基となるウランの採掘、核兵器製造、さらに大量の核廃棄物による核被害にも言及しました。その核被害者の中から、ウラン採掘による核被害者となったナバホ族を対象にした追跡健康調査を紹介しながら、「700以上のウラン鉱があり、1989年に採掘が停止されたが、いまもウラン残土によって汚染続き、85%の家屋で検出されている」とし、「これまで直接被爆による外部リスクのみが検証されてきた」と,内部被曝の問題が置き去りにされてきたことを指摘しました。その後再び、核実験の実態に触れ、「冷戦中には、統計的に言えば、8.6日に1回、核爆発が起きていた」とし、「冷戦は、限定核戦争だった」と強調しました。最後に「核抑止力は、核兵器使用を防ぐ」などとする「核の神話」に対し,核の現実は「核抑止力は、核兵器の製造・実験・配備の上に構築」さら「巨額の公的資金が投入され社会福祉から奪う」「実験と称するものは現実には攻撃」(風下にいる人たちにとって)「核のゴミのよって核兵器は後世まで拡散する」と指摘すると共に「核兵器であれ、平和利用であれ、核兵器に利用可能なポプルトニウムを製造することになり、使用済み核燃料貯蔵所は、核兵器貯蔵所だ」と指摘し、「核兵器の開発と保有は、それ自体が暴力である」とし、基調講演は終了しました。
その後、4人のパネリストによる問題的があり、それぞれに興味深いものでしたが、今日の報告では省略します。
今回のシンポジウムは、原水禁が1970年代の初めから向き合ってきた世界の核被害者に焦点を当てる内容でした
ようやくここまできたのかという思いもありましたが、「核と人類は共存できない」この理念の原点を改めて学ぶ機会となりました。
日本被団協のノーベル平和賞受賞を機に、広島でも世界の核被害者にさらに関心が深まることを期待したいと思います。
いのちとうとし
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