ベトナムの歴史(その34) ― ベトナム Now Ⅳ―
2021年に「ヒロシマとベトナム」シリーズに加え、「ベトナムの歴史」シリーズの寄稿をはじめ、昨年の9月(その28)から今年6月(その30-7)までの間、ベトナム戦争を取り上げてきました。来年、1975年4月30日の「サイゴン開放」(ベトナム戦争が終結し、南北統一決定的になった日)から50周年を迎えることから、7月に今日のベトナムを紹介する「ベトナムNow」に着手しました。
ところが、8月、9月、10月と枯葉剤被害者支援のための「“エージェントオレンジDay”2024inヒロシマ」(東広島市)や「チャリティ・コンサート」(福山市)の紹介に費やしてしまいました。あらためて、今月から「ベトナムNow」をお届けします。
1975年4月30日
「ベトナムNow」、すなわち「南部解放・南北統一」からの「50年の歩み」は1975年4月30日のサイゴン解放によって始まります。それから50年経た今日までのベトナムを紹介する「ベトナムNow」に入る前に、49年前の歴史的瞬間を見てみましょう。
南ベトナムの首都サイゴン解放を目指す「ホー・チ・ミン作戦」最終の日となった1975年4月30日午前11時半、南ベトナム大統領官邸(現在の「トンニャット宮殿)前に南ベトナム解放民族戦線(NFL)の旗を掲げた戦車隊が到着。直後、宮殿の屋上に南ベトナム解放民族戦線旗が掲げられました。この瞬間、ベトナム戦争が終結しました。
ベトナム戦争は一般的に、1964年のトンキン湾事件後の北爆をもって始まったとされ、「15年に及ぶベトナム戦争が終わった」と言われます。しかし、私は以前、1950年代初めからアメリカがフランスのベトナムでの植民地戦争に深く関わり、1954年のディエンビエンフーの戦いでフランスが敗退した後、ベトナム介入を本格化させたことを書きました。したがって「21年に及ぶベトナム戦争が終結」と表現します。
さらに言えば、1847年にフランス軍艦によるダナン攻撃に始まったフランスの植民地支配に抗する戦争、第二次世界大戦時の日本軍とフランスとの「二重のくびき」時代の抗仏抗日戦争、戦後の抗仏戦争(第一次インドシナ戦争)、ディエンビエンフー以降の抗米戦争(ベトナム戦争)と、実に130年にも及ぶ長い植民地支配と民族分断の鎖を断ち切った歴史的な日として1975年4月30日を捉える必要があると思います。
「サイゴン陥落」を伝えた日本人
この日、ハノイのラジオ局「ベトナムの声」の日本語アナウンサーとして「サイゴン陥落」を伝えた日本人がいました。九州大学農学部に留学中の夫、ルオン・ディン・クアと結婚、その後「解放区」(北ベトナム)に移住した中村信子さんです。夫、クアは日本で農学博士を取得し帰国後は、帰国後「解放区(北ベトナム)」で農業政策を推進しましたが55歳で亡くなります。中村さんも2年前(2022年5月)に亡くなられましたが、2008年に『ハノイから吹く風』を出版され、「サイゴン陥落」を告げた放送を回想されています。
中村信子さん:出典:東京新聞(2022年5月24日)
「1975年4月30日の朝はよく晴れわたっていた。もうすぐ夏を迎えるハノイの空には、まぶしい太陽が輝いていた。・・・・私はもう10年以上、日本語番組のアナウンサーをしている。私にとって忙しい日々が続いていた。今年に入って南ベトナムの戦況は新しい展開を見せ、解放戦線の勝利に次ぐ勝利のニュースが絶え間なく伝えられていた。今日あたりサイゴンが陥落するのではとの情報が流れ、放送局は朝からそわそわした雰囲気に包まれていた。・・・・そして11時を過ぎた頃、激しい爆竹の音がパン・パン・パンと激しく局中に響きわたった。『うわぁー』という歓声があちこちで一斉に沸き上がった。南ベトナムが解放され、ベトナムが完全に統一された、その感激の瞬間であり、歴史的な瞬間だった。・・・・このビッグニュースを世界に伝えるために待機していた各国語のアナウンサーたちは、次々に原稿をつかんで録音室に走り、勝利の喜びを伝えた。」
そして、「ホーチミン戦役の勝利を祝う!ホーチミン戦役の勝利を祝う!。視聴者の皆さん、私たちは大きな喜びを持って次のことをお伝えします。ホーチミン戦役は完全に勝利しました。サイゴン市は完全に解放されました。この歴史的な瞬間の大勝利を祝う爆竹の音が首都ハノイをはじめ、全ベトナムに響いています。ハノイの市民は、老若男女を問わず、一斉に通りに出て共に勝利を分かち合いました。民族の大勝利を祝っています。英雄不屈のベトナム人民万歳。愛する祖国、ベトナム万歳。」(『ハノイから吹く風』、中村信子著)
次号から1975年4月30日から今日までのベトナムを追う「ベトナムNow」の旅を始めたいと思います。
2024年11月20日(あかたつ)
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