日本被団協結成大会宣言―世界への挨拶
日本原水爆被害者団体協議会(以下「被団協」)は、長崎で開催されていた第2回原水爆禁止世界大会の二日目となる8月10日に結成されました。その結成総会の宣言が「世界への挨拶」です。
この宣言文について、森滝先生は、その著書「反核30年」に次のように書かれています。
「この誕生のいわばうぶごえとして発表した『結成大会宣言ー世界への挨拶』の文案は私にとって忘れがたいものである。というのは実はこの文案は三月の広島県大会(いのちとうとし注『3月18日に開催された最初の原爆被害者大会』)の前夜に私が徹夜で書き上げたものであったが、当時の被爆者の気持ちにはぴったりのものであったので、少し手直しして日本被団協の結成宣言として使ったのであった。今からみればいささか感傷的な所もあるが、人類最初の原爆の犠牲者が敢て『世界への挨拶』としてみずからのしめいとけついをうたいあげたものであるので、少し抄録しておきたいと思う。」
後に森滝先生が反省されることになる「核の平和利用」に希望を持つ内容も含まれていますが、全文紹介したいと思います。
下線部分が、森滝先生が「反核30年」に抄録されているカ所です。
結成宣言 = 世界への挨拶
原爆から11年あまりたった今になって、私たちは、はじめてこのように全国から集まることができました。あの瞬間に死ななかった私たちが今やっと立ち上がって集まった最初の全国大会なのでございます。今日までだまって、うつむいて、わかれわかれに、生き残ってきた私たちが、もうだまっておれないでてをつないで立ち上がろうとして集まった大会なのでございます。
私たちがこのような立ち上がりの勇気を得ましたのは、全く昨年8月の世界大会のたまものであります。あの大会で同胞の皆さんや、世界の皆さんたちにかすかな声が聞きとられて、私たちに温かいまなざしが向けられ愛の手がさしのべられはじめてから、私たちは急に元気づいてまいりました。私たちはこの機会に全世界の皆さんたちに心からの感謝と立ち上がりの決意とを披瀝したいと存じます。
又、私たちのこの感謝と決意の言葉は、あの瞬間に無残な死をとげ、又、その後のろうべき原爆症でつぎつぎに死んでいった30数万の父や母、息子や娘、夫や妻たちの声なき声に代っての言葉としてお受けとりいただきたいのです。
私たちは今日の集まりで亡き人々をしのび、又長い年月のかぎりない思いを互いに語り合いました。しかし、私たちの胸につもったかなしみと怒り、悩みと苦しみについてのつきることもない語り合いは、決してひとときのなぐさめや、きやすめのためではありませんでした。手をつないで決然と立ち上がるためにほかなりませんでした。世界に訴うべきは訴え、国家に求むべきは求め、自ら立ち上がり、たがいに相救う道を講ずるためでありました。
かくて私たちは自らを救うとともに、私たちの体験をとおして人類の危機を救おうという決意を誓い合ったのであります。
私たちは今日ここに声を合わせて高らかに全世界に訴えます。人類は私たちの犠牲と苦難をまたふたたび繰り返してはなりません。破壊と死滅の方向に行くおそれのある原子力を決定的に人類の幸福と繁栄との方向に向わせるということこそが、私たちの生きる限りの唯一の願いであります。
それにもかかわらず世界の現状はかえって水爆競争時代に入ったかのごとく広島、長崎の原爆に千倍の威力をもつ水爆の実験さえ行われています。私たちが「止めてくれ」と血の叫びを挙げているにもかかわらず、水爆実験は冷然として行われつつあります。原爆以来放射能の病いのおそろしさに直面してきた私たち、今年になってからだけでも早くも広島、長崎で数名の人たちが放射能の病いで死んでいった姿をまのあたりに見た私たちが、空気や水を放射能で汚染する水爆実験をどうして黙って見ておられましょうか。私たちはもはやいかなる力の前にも黙っていない覚悟です。
私たちは、遂に集まることができた今日のこの集まりの熱力の中で、何か「復活」ともいうべき気持ちを感じています。私たちの受難と復活が新しい原子力時代に人類の生命と幸福を守るとりでとして役立ちますならば、私たちは心から「生きていてよかった」とよろこぶことができるでしょう。
私たちの感謝と決意を披瀝して、この大会から全世界におくる挨拶といたします。
いのちとうとし
[お願い]
この文章の下にある《広島ブログ》というバナーを一日一度クリックして下さい。
« 2024年10月のブルーベリー農園その4 | トップページ | 平和大通りの樹木の話-2題 »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- プリンターが壊れました。(2025.07.12)
- 伊藤孝司著「原爆棄民」(2025.07.11)
- 変わるか、消えるか?!(2025.07.10)
- 「ヒロシマ平和絵画展」(2025.07.09)
- 2025年7月のブルーベリー農園その1(2025.07.08)
「#平和推進」カテゴリの記事
- 「ヒロシマ平和絵画展」(2025.07.09)
- 「核も戦争もない世界へー被爆80周年のヒロシマから訴えるー集会」」成功裏に終了(2025.07.06)
- ヒロシマとベトナム(その71) ―「昭和100年」と父― その3 (2025.07.05)
- 被爆者清水弘士さんの訃報(2025.07.04)
- 第44回反核平和の火リレーがスタート(2025.07.03)
「核兵器廃絶」カテゴリの記事
- 「ヒロシマ平和絵画展」(2025.07.09)
- 「核も戦争もない世界へー被爆80周年のヒロシマから訴えるー集会」」成功裏に終了(2025.07.06)
- 被爆者清水弘士さんの訃報(2025.07.04)
- 第44回反核平和の火リレーがスタート(2025.07.03)
- 原水爆被爆80年を考える集い(2025.06.28)
「被爆者」カテゴリの記事
- 伊藤孝司著「原爆棄民」(2025.07.11)
- 「ヒロシマ平和絵画展」(2025.07.09)
- ウリ民族フォーラム2025INヒロシマ(2025.07.07)
- 「核も戦争もない世界へー被爆80周年のヒロシマから訴えるー集会」」成功裏に終了(2025.07.06)
- 被爆者清水弘士さんの訃報(2025.07.04)
コメント