被団協がノーベル平和賞受賞
被団協(日本原水爆被害者団体協議会)がノーベル平和賞受賞という一報は、10月11日夕方の友人からのメールでした。
少し遅かったなと思いながらも、本当に良かったという気持ちになるとともに、頭に浮かんだのは、すでに亡くなられた被爆者運動、平和運動を担っておられた多くの先輩たちとジャーナリストの人の姿、そしてその人が発せられていた言葉でした。
「私らあー、銭金を欲しいけえー国家補償の被爆者援護法を要求しとるんじゃないよ。二度と、私らと同じような人間を作らんためなんじゃあー」が口ぐせだった被爆者運動のリーダーだった人。
「国家補償とは、過去の補償・現在の保障・未来の保証だよ。過去の補償は、あの時の被害者。現在の保障は、今も健康障害などで苦しんでいる被爆者。未来の保証とは、二度と放射能被害者を作らない保証だよ」という「三つのほしょう論」語っておられた人。
「被爆者ではないけど、被爆者の思いにできるだけ近づくことの努力」と語られた原水禁運動を指導してこられた方の言葉。
「にんげんは生きねばならない。いのち尊し」を語られた森滝市郎さん。
「ひろしまの加害と被害の歴史」を熱く語っておられた人。
まだまだたくさんありますが、このような言葉を語る時のその顔は熱く、今を生きる私たちへの期待の意味が込められていました。込められたその期待をプレッシャーに感じることも多くありました。
広島・長崎後、核兵器が戦争で使われなかったのは、被爆者の人たちを中心に発してきた様ざまな活動だと思います。同じ被爆者でも、韓国や米国、ブラジルなど国外に住んでおられる方の問題もありますし、被爆二世・三世の人たちの課題もあります。
一方、カタカナで書かれる「ヒバクシャ」は、核実験により、原子力施設の事故や放射能汚染により、世界中に拡大していることを忘れてはならないと思います。
来年は原子爆弾投下から80年という中、ノーベル賞財団は被爆者の人たち一人ひとりの活動を評価するとともに、これからの存在意味を期待して決めたのだと考えています。
当然ですが生存している原爆被爆者は減少し、やがてゼロになる日がやってくるでしょう。そうなった時の広島・長崎、そして原爆の体験がこの国の平和運動の原点であるのですから、その時の方が私たちに授けられている役割りは大きいことだと思います。
1996年12月、原爆ドームが世界遺産に登録された時、当時の文化庁は登録されることに消極的だったという話しを聞いたことがあります。米国や中国に気を使って、外務省から広島市への圧力は強かったとも聞きました。
この度のノーベル平和賞受賞、日本政府も米国政府も称賛の声をあげていますが、核抑止、核共有、アジア版NATOをめざし、ひいては日本も核兵器を持つことを望んでいる人たちの本音は、もしかしたら不愉快なのではと感じたりもしています。
だからこそノーベル平和賞にふさわしいこの国にするのは、私たちみんなの役割りであり努力にかかっていると思っています。
木原省治
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