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2024年9月10日 (火)

最大の「敵」は無関心

 福島原発事故の汚染水を太平洋に流し始めて、丸1年が経過したとの報道がありました。汚染水放出については地元の漁協をはじめ、国内外から強い反対の声が起こった時、政府や東京電力の言い訳は汚染水を保管するタンクが福島第一原発敷地内に溜まり続けて、本格的に開始する廃炉作業の邪魔になるというのが、その理由でした。

福島第一原発の廃炉作業ですが、その大前提は原子炉内の底部にある溶融核燃料(デブリ)の取り出し作業です。デブリの取り出しは東京電力も「廃炉の本丸」としていました。デブリの総量は福島第一原発1~3号機で、推定で880トンが残っているとのことです。放射線量が高すぎて、直接さわることも近づくこともできない物質です。

45年前の1979年3月、米国ペンシルベニア州スリーマイル島原発で炉心溶融事故が起こりましたが、その時のデブリも、1986年4月のチェルノブイリ原発事故のデブリも、すべてが取り出せない状態が現在も継続しているのです。そんな状態の原発が福島第一原発には3基もあるのです。

取り出し作業のために試験的に微量ほど抜き出して、その成分などを調べてみることを否定するものではありません。今回の試験的採取は3㌘を取り出すものでした。この試験的採取は3年位ほど前から計画されていたと思いますが、コロナ禍による影響などもあり遅れたのは事実です

そんなことで福島第一原発事故から13年5か月も過ぎ、やっとの思いで8月22日の試験的採取の初日を迎えました。

それがなんと、恥ずかしいような初歩的なミスで、お粗末な失敗となったのです。

249101

「福島民友」より

新聞記事によると、採取に使う5本のパイプの取り付け順が間違っていることが判明したとしていました。

それでも東京電力幹部の、ノホホンとした姿には呆れるばかりです。記者会見の映像を観ていても、まるで他人事という感じにしか見えませんでした。

249102

「YouTube」より

作業の指示が協力会社の作業員まで行き渡らず、チェックの体制が不十分だったとしていますが、この呆れるミスに、どれだけのお金を使ったのでしょうか。ミスを重ねようが誰もフトコロを痛めないという無責任体質が、ことの本質ではないでしょうか。

福島第一原発事故後、全国で24基の原発が廃炉されることになり、中国電力では島根原発1号機の廃炉作業が行われています。しかし島根1号機程度の原発(電気出力50万キロワット程度)で、国内で廃炉が完了したところは無いのです。廃炉作業は簡単な作業では無いし、ましてや事故を起こした福島第一原発の廃炉作業は、廃炉の在り様を含めて議論をしていかなければならないことだと思います。

なのに汚染水はさっさと海に流してしまう、放射能は時間の経過とともに、そのレベルは下がってくるものです。福島第一原発の敷地にもタンクを設置する場所はありますし、置いておけば放射能の値も下がっていきます。近くに在る福島第二原発は廃炉となり、この場所にも敷地は在るのです。

日本政府が想定している廃炉終了後の姿は、その場所が更地になることですが、事故を起こした福島第一原発の場合を同様に考えるのは、事態を知らない杜撰な考えだと思います。あと27年、2051年で政府や東京電力は、三つの原発からデブリを取り出して廃炉が完了するとしています。そんなことは不可能ですし、こんな無責任体質は、本当に困ったことです。

自民党の総裁、立憲民主党の代表選挙が行われていますが、福島第一原発の今後についての議論がされていないこと、原発・エネルギー政策を避けていることに、強い怒りを感じています。

反原発新聞の8月号のコラムの欄に、『「敵」は推進派ではなく無関心』というタイトルで川本浩之さんという方が書いておられました。そうだと思いました。無関心は私たち自身の責任だとも思いました。

木原省治

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コメント

いつも興味深い記事ありがとうございます。些細な失敗を繰り返しながら廃炉に向けて、莫大な人件費や廃炉費用を出せるのかと不思議に思ってます。誰が費用を負担しているのか、みんな無関心なのでしょうか?

横浜リカさん、コメントありがとうございます。改めて、廃炉とはどういう状況を指すのかを考えないと、お金の使い放題、無責任の限りだと思います。是非とも関心をもって、これからの動きを見ていきたいと思っています。

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