「第7次エネルギー基本計画」の議論が始まった
5月15日、経済産業省の「総合資源エネルギー調査会の分科会」で、「第7次エネルギー基本計画」の改定に向けた議論の初会合が開催されました。ほぼ3年毎に改定されるエネルギー基本計画ですが、来年春までには決定するとしています。
斎藤健経済産業大臣は、初会合の場で「脱炭素エネルギーへの転換は極めて困難な課題だ。安定的に供給できるかどうかが国力を大きく左右する」と発言しました。
前回のエネルギー基本計画の改定は3年前ですから、2021年でした。この時は主に、⑴少子化や省エネが進むために電力需要は減る。⑵原発依存度を「可能な限り低減する」ということを基本的な考えで決めました。
しかし、あの時から政府の基本的な考えは変更されました。「政府の」というよりも、21年10月に発足した岸田文雄政権の方針だと思います。 政権発足の翌22年10月、「GX実現に向けた基本方針」で「原発を最大限活用する」と方針転換を行ったのです。「GX」とは、「グリーントランスフォーメーション」の略で、脱炭素社会に向けて再生可能なクリーンエネルギーに転換していく取り組みのことで、2050年のカーボンニュートラル実現に向けての取り組みのことです。
この約3年間の国際的な変化は、⑴コロナの世界的な流行、⑵ロシアのウクライナ侵攻、⑶エネルギー価格の急上昇 ⑷イスラエルとパレスチナとの紛争による中東情勢などがあると思います。
岸田政権は、何よりも2016年に発効したパリ協定を言い分にしていると思います。パリ協定は、2020年以降の温室効果ガス削減に関する世界的な取り組みを示したものですが、世界共通の「2℃目標(努力目標は1.5℃以内)を掲げたのです。
この協定は、これまで対象国を「先進国のみ」としていたのですが「すべての締約国」とし、義務の「目標の達成」としていたのを「目標の策定・提出」と、より厳しい内容にしたものです。
そして、昨年11月から12月にかけてUAE(アラブ首長国連合)のドバイで開催されたCOP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)、有志国連合から出された、「パリ協定を達成するために原発容量を今より3倍増やそう」とする提案を日本は賛成したのです。これには25カ国が賛成していますが、COP28の締約国は198カ国ですから「原発3倍」はまさに少数派なのでした。
原発3倍に賛成した日本などに対し、世界中から疑問の声が出されました。原発3倍の有志国の提案は、多く報じられていたように思いますが、それに反対する国の声が、ほとんど報じられなかったのは疑問を持っています。
ドイツは、「原発3倍」に対し、次のような反論をしています。
Ⅰ;世界の気候シナリオは、パリ協定に基づく気候目標を達成するために原発を必要としないことを示している(どのモデルも2050年のネットゼロでの原発の割合は小さい。)
Ⅱ:原発の割合が高くても、再エネの割合が低いシナリオでは、気候目標を達成できない。つまり、再エネの拡大が気候目標を達成するための主要な原動力である。
Ⅲ:原発の役割が再エネに比較して圧倒的に小さいとしている気候モデルシナリオですら、その原発設備容量の想定は実際の各国の楽観シナリオの総和よりも大きい。言い換えれば、原発は楽観シナリオでも実際には全然増えない。
3年前のエネルギー基本計画議論では、電力需要は減るとしていた日本ですが、この度は一転して電力需要は増加するとしました。その理由として、人手不足の解消などでAI(人口知能)が普及と、それに伴うデータセンター(DC)や半導体工場増を揚げているのです。
これまで電力需要が増える(だから原発が必要)ことの理由を、いろいろと聞かされてきましたが、まさかAIが舞台に上がるとは思いも寄らないことでした。
この度の総合資源エネルギー調査会の「有識者」の人たち。会長は東京海上日動火災保険の相談役で、16名の委員は、ほぼ全員は原発推進者で占められています。
木原省治
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