映画「RICHLAND」リッチランド
8月3日からの広島本上映に先駆けて7月9日午後6時半から横川シネマで映画「RICHLAND」(リッチランド)の特別先行上映&監督トークがありましたので、見に行ってきました。
映画の内容を紹介できませんので、チラシに書かれた文章の一部を引用します。
「アメリカ北西部で太平洋に面しカナダと国境を接するワシントン州南部にあるリッチランドは、平和で美しいアメリカの典型的な郊外の町です。
そのリッチランドは、核兵器開発マンハッタン計画における核燃料生産拠点『ハンフォード・サイト』で働く人びとと家族が生活するためにつくられた町です。1945年8月9日、長崎に投下された「ファットマン」のプルトニウムは、ハンフォード・サイトで生成されたものです。
終戦後は、冷戦時に数多く作られた核兵器の原料生産も担い,稼働終了(筆者注:1987年)した現在は国立歴史公園に指定(筆者注:2015年)され、アメリカの栄光ある歴史を垣間見ようと多くの観光客が訪れている。」
リッチランドで思い出すのは、高校の校章に「キノコ雲」を描いていることです。確か、このことが明らかになった頃の1988年6月の第3回国連軍縮特別総会に参加するため渡米した広島県原水禁の代表団が、ハンフォードを訪れ核汚染を告発する市民と交流した歴史です。
映画「RICHLAND」は、「原爆は戦争の早期終結を促した」と誇りを口にする人びと。リッチランド高校の「キノコ雲」が町のいたるところで掲げられている。町の歴史を誇りに思う者がいる一方、多くの人々を殺りくした“原爆”に関与したことに逡巡する者、そして核廃棄物による放射能汚染への不安を今も抱えながら暮らしていく者。そうしたさまざまな市民の姿を描いています。
私が映画を見て一番興味を持ったのは、ネイティブアメリカン(アメリカ先住民族)とハンフォード・サイトとの関わりです。
ここはコロンビア川、スネーク川、キマ川の合流点に当たり、伝統的にネイティブアメリカンが住んでいた土地でしたが、ハンフォード・サイトを作るため、古来そこで生活してきたネイティブアメリカンを追い出し奪った土地だということです。
映画では、ネイティブアメリカンの古老が、そのことを語るシーンが出てきます。
ネイティブアメリカンの核被害については、ウランの採掘との関わりで理解をしていたつもりでしたが、核開発それ自体によっても犠牲を強いられてきた歴史を新たに知る機会となりました。
映画を見ての一番の感想は、そのことです。
上映終了後、アイリーン・ルスティック監督とこの映画に出演するアメリカ在住の被爆3世川野ゆきよさん(オンライン)のトークがあり、参加者の感想もいろいろでましたが、私にとっては、このネイティブアメリカンとの関わりを知っただけでも、この映画を見に来た甲斐があったように思います。
広島での本上映は、横川シネマで8月3日から8月23日までのロングランで公開されます。「アメリカが“核”とどう向き合って来たのか」を知る機会になる映画だと思いますので、ぜひ足を運んでみてください。
いのちとうとし
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「オッペンハイマー」と「リッチランド」、この二つの映画が広島で上映されること、とても興味深いことです。以前は米国の人に原爆を語れば、「原爆投下で戦争を早く終わらせた」という答えがほとんどでしたが、最近はその数が減ってきているように思っています。被爆者の訴えが影響していると思いたいですが。
逆に世界の政治指導者らからの、核兵器使用を正当化する相次ぐ発言、それらとの対峙の中にいると思っています。
投稿: 木原省治 | 2024年7月12日 (金) 09時44分
木原さん
コメントありがとうございます。
ぜひ、この映画も見て下さい。
宮本ゆきさんの著書「なぜ原爆は悪ではないのか アメリカの核意識」にも,リッチランド高校のことが触れていますが、そこでは映画で見るような変化は語られていません。この映画を見て、少しずつですが、アメリカにも変化があるのかなと感じました。
投稿: いのちとうとし | 2024年7月12日 (金) 16時06分
碑めぐり案内をする中で、アメリカ人の変化を少しずつですが、感じています。でも、でも過半数には達していませんからね。
8月の碑めぐりは、自治体の企画による「ヒロシマ派遣団」や、労組の企画による案内です。新たな出会いはとても嬉しいものです。頑張ります。
投稿: 木原省治 | 2024年7月12日 (金) 21時28分