福島原発視察報告その5
視察2日目の最後は、地元の皆さんとの交流です。
最初に、浪江町議会議員で「福島原発事故被害から健康と暮らしを守る会」会長の紺野則夫さんの話しを聞きました。紺野さんは現在,全ての福島原発事故被害者に対し国による「健康手帳」交付を求める運動の中心的役割を果たしておられます。2017年の福島視察でも当時の馬場町長に同行し、福島市での開会行事でいろいろと報告をしていただきました。
紺野さんの話しは、13年前の原発事故当時の浪江町の避難状況からはじまりました。
浪江町の健康保健課長だった紺野さんが、浪江町にある支所で勤務中に、東日本大震災が発生。翌日の3月12日政府から東電福島第一原発事故による「避難指示」がだされ,対策本部を設置して対応したこと、その避難指示によって浪江町中心部から30km離れた同じ町内の津島地区に5~6時間かけて住民がやって来た。
東京新聞2023年3月18日より
のちに明らかになるのですが、原発の爆発事故によって発生した放射性物質が集まる放射性プルーム(放射性雲)は、東京電力福島第一原発から北西の方向に流れたため、津島地区は最も汚染が酷い地域になってしまいます。
馬場町長は、「ここも危ない」とさらに避難を決断。「どこに行くか」と探して見つけたのが、二本松市の東和地区。3月15日に津島にいた1万1千人が移動。一番の問題は医療問題で、東和には「地元の人しか診察できない」小さな診療所しかなかった。3月17日、18日に診療所を立ち上げ,医師は何とか確保できたが、看護師がいない。6月に発注したホーボディカウンターが届いたのが翌年の5月頃。自分の体は、800ベクレルの被曝。馬場町長は、原発事故被害者の健康管理、健康保障への責任は本来国が果たすべきだが、国がやらないのなら、として被爆者健康手帳と同じものをつくろうと町独自の「放射 線健康管理手帳」 (健康手帳)をつくり全町民に配布した。その後、広島県被団協の坪井理事長と話した時、坪井さんから「10年、20年の健康をきちんと調べる。原発と原爆はどこが違うのか。広島と福島が違うのは、爆風と熱だけだ」と「健康手帳」への支援を送っていただいたこと。当時広島市長だった秋葉さんには「日本政府が何もやっていないことを国際社会に訴えるべき。6万人の命が守れなくて1億人が守れるのか」と示唆をいただいたことを思い出す。
役場を退職後、「何をやるべきか」と考え、町議に立候補した。医療費の無料化を継続させなければと思っている。当時3千人の子どもたちがいたが、この子たちが健康に暮らせるなら何でもやるというのが私のスタンス。
「差別よりもいのちが大事」と言った馬場町長の意思を引き継ぎ、「検診体制の確立を含め医療費無料化の制度を構築することが国の責務」と「健康手帳」の法制化求めている。
紺野さんの「健康手帳法制化」に取り組む強い思いを感ずることの出来たお話でした。
二人目は、私たちの「福島原発視察」の日程作成に協力をいただいた福島県平和フォーラムの引地力男事務局長の話しです。
引地さんの話しは、「ALPS処理水の海洋放出」の問題です。いま福島では、「汚染水」呼称が問題視され、3月の県議会では「汚染水」との表現を教育現場で認めない自民党の意見書が採択され、また「汚染水」と発言したひとが強いパッシングを受ける実態が報告されました。こうした現状の中で福島県平和フォーラムも「ALPS処理水」と表現していることが、紹介されました。もちろん、福島県平和フォーラムも発生するのが「汚染水」であるとしていますが、言葉狩りとも思える状況が広がる中で苦悩しながら運動を展開せざるを得ない実態が報告されました。
このことについては、様々な意見があると思いますが、ここでは福島の現状の紹介だけにとどめておきます。
当初予定していた漁業事業者の話を聞くことが出来ませんでしたが、現地の声を聞くことの大切さをこの交流でも学びました。
これで、ようやく二日目の日程の報告が終わりました。
次回は、翌朝出発前に散策した7年ぶりに見た浪江町の街の様子と、双葉町にある「東日本大震災/原子力災害伝承館」見学の様子を報告します。
いのちとうとし
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