「世界情勢の変化」で何故「憲法尊重擁護義務」?―その2
広島市は、職員の服務宣誓書を変更した理由を「世界情勢の変化」だとしています(人事課長との面談でも繰り返し)が、どうしても理解できません。
私が言うまでもないことですが、日本国憲法は、わが国の最高法規ですから、世界の情勢の変化によって公務員がその向き合い方(尊重し擁護する)を変えるようなことがあってはならないはずです。ですから、「世界情勢の変化」のみを理由に,「職員の服務宣誓書」の内容を変更したという説明には、納得がいきません。
「世界情勢の変化」を理由とすることには、もう一つの矛盾がります。広島市は、これまで「宣誓書にある『国際平和文化都市』は、唯一本市だけが掲げるものであり、憲法や地方自治法の理念が流れ込んでいるものと考えています。」とし、「だから、宣誓書の内容を変更することは考えていません。」としてきました。そうであれば。「国際平和文化都市」の広島市の職員は、これまでも国際環境、国際関係を当然考慮して憲法を尊重し擁護してきたはずです。「今更国際情勢が変化したから」と言って、変更するのであれば、これまでの広島市の説明はなんだったのかということになります。
そう考えましたので、私は、次のように意見を述べました。「もし服務宣誓の内容を変更するというのであれば、例えば最近公務員による基本的人権を侵すような事象が発生しているため、改めてそのようなことが起こらないよう自覚を促すためというのなら、理解できます。しかし、今特段そのような事象が多発しているような事情を聞いたことがありません。」この意見には特段の反論はありませんでした。ところが、広島市議会の録画を見ると、広島市がこの変更の契機の一つとした「令和6年第1回定例会」(2024年2月21日)の議員の質問では,「服務宣誓書に『憲法尊重擁護の義務』を入れるべきだ」とする理由として、最近の広島市職員の市民への対応などをあげているだけで、「世界情勢の変化」など全く触れていないにもかかわらず、答弁では、何故か唐突に「世界情勢の変化があるので、変更の可能性を考えたい」と答えています。奇妙としかいいようがありません。
憲法前文が加わった研修資料
人事課長との面談で私が次に指摘したのは、次のことです。「昨年12月に、広島市長が職員研修において『教育勅語』を使用していることが明らかになった以降、市民から『憲法を守っていないのではないか』との声が上がったため、それを否定(というか反論するため)し、『私は憲法をきちんと尊重擁護している』ということをいうために,今回の修正が行なわれたと考えるのが一番妥当だと思うのですが」
しかし、残念ながらこの意見交換では、私のこの意見を肯定する考え方は示されませんでした。
ところが、翌日(13日)の中国新聞記事を読んでびっくりしました。私が人事課長に会った同じ日の12日に行なわれた広島市長記者会見で、松井市長が、「本年度の新規採用職員向け研修資料に新たに憲法前文の一部を加えた意図についての『いろいろな意見をどう受け止め、公務員として憲法を尊重し擁護する義務を果たすかを考えるため』と述べた」ことを紹介し、さらに「教育勅語を引用することで『憲法を守っていないのでな』との誤解の声があるため、憲法前文の一部を追加して『丁寧に説明した』と話した」と紹介しています。
この記者会見では、「職員の服務宣誓書」の変更に言及はされていませんが、この発言から言えることは、昨年来問題になっている「教育勅語引用」問題を機に、「憲法を尊重し擁護する義務」を重視したことを表明しなければならないとして「新規採用職員向け研修資料」に憲法前文を加え、その同じ流れの中で,同じ新規採用職員が行なう「服務宣誓書」に「日本国憲法を尊重し、かつ、擁護するとともに」が追加されたことは明白です。
広島市に対しては、市長の記者会見での発言を受けて、どう考えるのかを改めて、問い合わせています。
ところで、今回の「職員の服務宣誓書」の変更では、以前にも指摘したことですが、もう一つの問題が明らかになりました。次回考えてみたいと思います。
いのちとうとし
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