「出力抑制」で、再生可能エネルギー発電イジメのないように
4月というのに昼間は暑ささえ感じる日が続いていますね。こんな天候の日は太陽光発電が多く発電しています。一方で暑からず寒からずという中では、電気の使用量は減っています。
そこで生じるのが、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギー(再エネ)電力の出力抑制という事態です。出力抑制は、送電網を持っている中国電力では「中国電力ネットワーク(株)」が、再エネ電力を送電網に通さないという措置を行い、その電気を使わないようにする措置のことです。
電気は、その特質から発電電力量と消費電力量は一致していることが、必要です。専門的には「同時同量」の原則といいます。
2018年9月6日深夜、震度7を記録した北海道胆振東部地震が発生した時、苫東厚真(とまとう あつま)という大型火力発電所2・4号機(116万kw)が発電できなくなり、北海道全域が停電する「ブラックアウト」が発生しました。116万kwが停止しただけで、なぜブラックアウトが起こったのかと思われるかも知れませんが、発電量と消費量が急激に一致しなくなったために、こういう事態になったのです。
しかし正確には北海道全域が停電したというのは、間違いです。北海道内にある島の地域では、その島の中に住んでいる人だけの発電所を持っていて、その地域だけを賄っているので、その島内では停電しなかったのです。
話しが最初に戻りますが、太陽光発電などの発電設備が増えたので、そうして発電したものが無駄に捨てられているのです。今や全国の電力会社で、このような出力抑制を行う事態になっています。天候予測の正確性が上がり、特別な事態が起こらない限り、ほぼ正確に電力使用量の予測が可能となりました。しかも消費される電力量が減る傾向の中で、出力抑制を実施せざるをえない状況です。
もちろん太陽光発電は夜になれば発電をしませんから、その時には火力発電や水力を調整して発電しているのです。
資源エネルギー庁の資料より
先日、ドイツで脱原発を実現した人と話しをする機会がありました。ドイツでも出力抑制を行うことがあるということでしたが、その回数は日本よりも断トツに少ないということでした。私もまったく出力抑制を行わないのは、不可能だとは思いますが。
ベースロード電源という言葉を聞いたことがあると思いますが、電力消費量が少ない時でもこれ以上は消費量が落ちないという電力量のことです。日本では原発や大型火力で発電された電気をベースロード電源として、送電網に優先的に接続されています。原発や大型火力を増やした結果、電力消費量がベースロード電源の発電量に近くなると、再エネ発電量は要らないという事態になるのです。
しかしドイツでは再エネ発電の電力を、夜間は貯めておくという技術を開発してベースロード電源にしているために、出力抑制の必要性はほとんど無いのです。
電気を蓄える技術は日本でも大きく進んでいます。しかし日本では原発優先という政治の思惑が強くて、福島原発事故後、再エネを増やそうとした方針は消え失せてしまったとしか言いようがありません。
以前は「夜間電力」を使って温水器に使用というのが普及していましたが、今や昼間の電力をどう使い、全体的に再エネ電力をどう普及させるかが大きな課題です。
電気自動車(EV車)の普及が続いている中、昼間の電気料金を安くして、電気自動車の電池充電を推奨するとか、自動販売機でも最近見かけるようになった「ピークシフト自販機」を普及させることも必要だと思います。再エネ電力の売りをPRしている新電力にとっては、出力抑制されてしまうことは、まさに死活問題なのです。
中国電力はこの8月にも、島根原発2号機を再稼働させるとしていますが、原発は電気使用量の変化に応じて発電量を調整できるような発電設備ではありません。もし島根原発2号機が動くような事態になれば、この原発の発電電力の82万kwのベースロード電源が増えることになります。そうなると、ますます再エネ発電を出力抑制するようになってしまいます。
繰り返しになりますが、福島原発事故の教訓は「原発を止めて、再エネ電力に!」だったのです。再エネ発電の出力抑制は、再エネ発電をめざして設立された新電力会社イジメとしか言いようがないと思います。
木原省治
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