中国電力カルテル株主代表訴訟初公判で陳述をしました(その2)
4.株主代表訴訟を決意した理由
カルテル事件が発覚し排除措置命令及び課徴金納付命令が出された直後の株主総会が、昨年6月28日に開催されました。この株主総会をもって、1年前に社長に就任されたばかりの瀧本夏彦さんは、カルテルの責任者として退任されました。後任として中川賢剛さんが就任し、株主総会翌日に社員向けにあいさつを行っています。
その挨拶の中で、カルテル事件の原因について「確実な業務遂行を優先しすぎてしまったことが挙げられる」と述べ、「私たちの価値観と社会の価値観に少しずつズレが生じていることに気付かなかった、というのが根本原因の一つ」と話しています。
私はこの挨拶を聞き、正に「空いた口が塞がらない」という思いを致しました。また、カルテル事件が公になった直後には、当時の役員を含め社員に電力自由化の認識が薄かったという趣旨の報道記事もありました。
電力事業の全面自由化が実行された2016年4月1日の1年以上前から、新聞などのマスコミは連日のように、自由化に関する報道を行っていました。電力事業を営む電力会社の人が、それも責任者という立場にいる方が、電力自由化という社会的要請に基づく改革の意義を軽視し、まるでよそ事の感覚で仕事をしていたことには、呆れててしまいました。
中国電力本社
中国電力グループの経営理念は「信頼。創造。成長。」です。いずれもとても大切な要素ですが、もっとも大切なことは「信頼」だと私は受け止めています。社会・地域からの失われた信頼を回復させることは厳しい状況にあると言えます。
公正取引委員会からの立入りが行われた直後に、中国電力OBの方から電話があり「木原さん、『鬼滅の刃』という映画があったけど中国電力は『自滅の刃』だねえー」と呆れたような声で話しておられました。
経営陣の責任を考えるとき、どうしても合点がいかないのがリーニエンシー制度を何故使わなかったのかということです。カルテルに関わった関西電力、九州電力などはリーニエンシーを使い課徴金の減免を受けました。関西電力は100パーセント減免され課徴金がゼロとなりました。改めるべきは改めると頭を切り替え、会社の利益、株主の利益、顧客の利益を最優先に危機管理する責任を全く果たしていないと断じざるを得ません。
最初にも述べましたが、私は中国電力という会社を長い間視てきました。中国電力はこれまでも同様の事件・不祥事を度々起こしています。しかし、真相を明らかにし、これを公表し、世間からの厳しい目を身をもって受け止め、とことん反省をして来なかったから、またぞろカルテルを起こしてしまったのだと思っています。
この度のカルテル事件でも、株主・顧客に真相をうやむやにしたまま、社長経験者3名をスケープゴートにして、幕引きを図りたいと考えているのではないかと疑います。「何時、誰が、どこで、何故、どんな談合をしたのか」が明らかにされなければなりません。
5.おわりに
昨年2月、中国電力の元社長だった方が亡くなられました。その方から送られてきた、昨年の年賀状には、この度の中国電力の姿勢と対応について、「立ち直る頭も情熱もないのではないでしょうか」「社員諸君の奮起を期待するとしましょう」と書かれていました。私は、この元社長さんからの遺言のようなメッセージに応えたいという思いから、止むにやまれぬという気持ちで、株主代表訴訟を起こしたのです。
最初にも述べましたように中国電力には、経営層に対する不信感を払拭することと同時に、株主からも顧客からも地域住民からも信頼され愛される企業になってほしいという思いを強く持っています。そのためには株主代表訴訟しかないと思いました。
裁判所におかれましても、被告のみなさんにも、支援者の皆さんにもこの気持ちを訴えさせていただき、私の陳述といたします。
ありがとうございました。
※「リーニエンシー」→課徴金減免制度
木原省治
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