広島市長の認識を問う
広島市の新規採用職員研修において、松井市長が「心の持ち方」などとして戦前・戦中の「教育勅語」の一部を研修資料に引用していたことが報道されました。しかも、松井市長就任の翌年である2012年から今年に至るまで毎年、研修資料に引用されているということです。まさか、「国際平和文化都市」を標榜している広島市で、職員に対してこのような研修が行われているとは、思いもよらず、驚きと失望を禁じ得ません。
引用されているのは「爾臣民 兄弟に 友に 博愛 衆に及ぼし 学を修め 業を習い 知能を啓発し 進んで公益を広め 世務を開き」の部分で、英訳とともに掲載されているようです。
12月11日、松井市長は、新聞記者の取材に対し、「教育勅語を再評価すべきとは考えていない」と断ったうえで、「その中に評価してもよい部分があったという事実は知っておくべき」と述べたと報じられており、同月19日の定例会見においても、「民主主義を取り込もうとしている内容だから評価できるのではないかと、(研修の中で)説明している」と見解を述べています。
しかし、「教育勅語」は、天皇を主権者とする大日本国憲法下で、「臣民に対して発せられた天皇陛下のお言葉」であり、そのすべては「一旦緩急あれば、義勇公に奉じ、以て天壌無窮の皇運を扶翼すべし」に帰結するものです。その教えが、アジア太平洋戦争において、どれだけの若者に犠牲を強いたことでしょうか。その反省のうえに日本国憲法が定められ、国会において「教育勅語」が排除・失効が決議されたのです。
松井市長の言葉からは、明治以降、敗戦までの間、「教育勅語」にもとづく教育によって、多大な犠牲を払った歴史的事実や、「教育勅語」が国会で排除及び失効が決議されたことに対する「重み」が、まったく感じられません。一部であれ「評価してもよい部分」を「教育勅語」から引用することそのものが、日本国憲法の理念や国会決議に反する行為です。
松井市長においては、そのことを真摯受け止めて発言を撤回し、国際平和文化都市の市長として、真に世界の恒久平和につながる発信をしていただきたいと願います。
広教組 森﨑賢司
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