福島第一原発汚染水問題の無責任とウソ
福島第一原発から海洋に放出されている汚染水、あらためて政府と東京電力の無責任さとウソを書いておかないと「腹の虫が収まらない」という気持ちです。
何といっても今から8年前の2015年8月25日、政府と東京電力は福島県漁連への回答で「漁業者をはじめ関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と約束しているのです。しかし関係者の理解のない状態の中、海洋放出設備の工事を強引に進めたのです。もちろん今でも漁業者の反対の意思は変わっていません。
そして汚染水の放出期限は、2051年に福島第一原発の廃炉が完了するその時までとしています。耳かき一杯の溶け落ちた燃料デブリも取り出せない中で、燃料デブリが回収されるはずがありません。福島第一原発1号~3号機にある燃料デブリは推計で880トンあるとされているのに、28年後の2051年に取り出せる訳がないし、廃炉が完了する訳がありません。
そして汚染水の放出に反対しているのは、世界中で中国だけということが言われていることです。これはウソです。
私が調べた限りですが、次のところが汚染水放出に反対を表明しています。
・太平洋諸島フォーラム
・オーストラリアの戦争防止医師協会と自然保護基金
・ニュージーランドの環境団体
・フィリピンン非核バターン運動などによる「海洋放出は人類への犯罪である」との声明
・韓国の783の市民団体の声明 海洋法国際裁判所への提訴をもとめる声明
・米国の核のない世界のためのマンハッタンプロジェクト カリフォルニア州のウエスト ハリウッド市議会
・国連人権理事会
・イギリス・アイルランドの非核自治体協議会(NFLA)
国際海洋法やロンドン条約に抵触する可能性も指摘されています。
ロシアも中国と同じく、日本からの海産物の輸入を制限するとの報道も目にしました。
また、福島の汚染水と一般の原発から排出されている排水は同じだというウソです。先日、10月1日付けの河北新報(かほくしんぽう)という新聞を手にしました。仙台市に本社のある新聞で、この地方で多くの読者を持つ新聞です。
この新聞の3ページの下に「トリチウム分析結果」というのがありました。「海水に含まれる放射性物質トリチウムの濃度を分析した結果、いずれも排出できる下限値未満だったと発表した」とありました。発表したのは東京電力です。
この検出結果についても、疑問を持って欲しいのです。第一には測定しているのがトリチウムだけということです。アルプス(多核種除去設備)と呼ばれる装置、汚染水はこれを通しているからトリチウム以外は全部除去されているような報告がされていますが、環境省の報告でも62種類の放射性物質が除去されるとしていますが、その他の放射性物質はどうなっているのか解らないのです。対象外の放射性物質は37核種で、これらのものは自主的に検出限界未満であることを確認しているとしていますが、これらの放射性物質の放出量がいくらで、その影響については説明されていません。
検出下限値未満というのは、リットルあたり7~8ベクレルがこの値ですが、この値が今後どういう影響を及ぼすのかは、説明が行われていません。
汚染水を陸上保管するのではなく海洋放出ありきだったのは、福島の全保管量相当を1か月で放出する六ヶ所村再処理工場のためだろうともいわれてます。まさに汚染水問題が原子力政策の矛盾を、示したのだと思います。原発は「トイレの無いマンション」と言ってたことが明確になったのではないでしょうか。
木原省治
[お願い]
この文章の下にある《広島ブログ》というバナーを一日一度クリックして下さい。
« 長崎市の死没者名簿と二重被爆者 | トップページ | 広島被爆二世裁判の控訴審始まる »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 2025年「全国被爆二世交流会」(2025.02.09)
- 2025年2月のブルーベリー農園その1(2025.02.08)
- 上関をめぐる今年の動きを予想する(2025.02.10)
- 書籍「被爆者阿部静子は語る」(2025.02.07)
- ヒロシマとベトナム(その66-2)(2025.02.06)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 2025年「全国被爆二世交流会」(2025.02.09)
- 上関をめぐる今年の動きを予想する(2025.02.10)
- ヒロシマとベトナム(その66-2)(2025.02.06)
- ヒロシマとベトナム(その66-1)(2025.02.05)
- 2月「3の日行動」(2025.02.04)
事故を起こし、収束もしていない原発から出るのは、所詮は汚染水、少なくとも処理済み汚染水であって、稼働中の原発が排出しているトリチウム入り冷却水とは、まるで違いますし、薄めれば良いというような理屈が通れば、環境規制は意味がなくなります。そうしたことが行われていた1960年代までに、どれほどの海洋汚染が拡がったか考えればわかることです。
また国民目線で見れば、海洋投棄にかかる費用、監視や検証、風評対策など考えれば、どのほどの費用を投入して、それらを行うのかも大きな問題です。どうせ使えなくなった周囲の土地を利用してタンクに貯蔵しておく方が安いという試算も多くあります。お金をかけて不安をばら撒く、そんな政策を正確に報じない日本のメディアの責任も大きいと思います。
投稿: 工場長 | 2023年10月26日 (木) 10時29分
工場長さま
コメントありがとうございます。
全くご指摘の通りです。汚染水は汚染水でしかありません。
そのことをはっきりとさせることこそが、原発事故と向き合う姿勢だと思います。
無批判に政府情報を垂れ流すマスコミの報道姿勢に、うんざりです。
原発政策を推進させたマスコミの責任は大きいはずですが、全くその反省の姿勢が見え図、観責任のそしりは免れないのではないでしょうか。
投稿: いのちとうとし | 2023年10月26日 (木) 15時48分
工場長さん、いのちとうとしさん、コメントありがとうございました。汚染水を含め、今年ほど核のゴミのことが大きな関心となり、話題になったと思います。
だから政府も電力会社もマスコミを総動員して、「汚染水は安全だ!」と大キャンペーンを行っているのでしょうね。
10月26日は、60回目の原子力の日、私たちにとっては「反・原子力の日」でした。12時から1時間、中国電力本店前で集会を開催しました。この場でも核のゴミのことが大きなテーマになりました。
これからもよろしくお願いします。
投稿: 木原省治 | 2023年10月27日 (金) 15時35分