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2023年8月 5日 (土)

ヒロシマとベトナム(その50) ~技能実習制度を考える~

安芸津で発生した技能実習生による「男児遺体遺棄事件」 ~妊娠したら帰国させられる~

4月20日、「安芸津町でベトナム人技能実習生が遺体遺棄容疑で逮捕された」というニュースが飛び込んできました。3年前、東広島市志和町で発生した同様の「事件」を機に「二度とこうした事件が起きないように」と、各地域で交流会・イベントを重ねてきました。幾度か開催した安芸津町でもベトナム人技能実習生たちも参加してくれていただけに、本当にショックでした。

皆さんも記憶に新しいと思いますが、「事件」の概要は次の通りです。

Photo_20230804203301

(2023年8月3日、RCC中国放送報道より)

当時19歳の実習生(以下、Aさん)は、出国前から妊娠の可能性を認識していたが、渡航のために父親が負った借金が返済できなくなることを恐れ、妊娠を隠して10月に来日。1月20日、出産。間もなく死亡したため自室のベッドに遺体を隠したまま生活。その後、出産と男児の死亡が知られ、帰国させられるかもしれないと考え、21日、東広島市安芸津町の空き地に穴を掘って遺体を埋めて遺棄。4月18日に遺体が発見され、20日に逮捕されたという「事件」です。

未成年のため家庭裁判所に送られましたが、家裁は「異国の地で出産し、誰にも助けを求められないまま、悩みを抱え込んでいた」事情を「同情の余地が相応にある」とした一方、「わが子の死体を敬うという意識を欠き、地域社会の平穏に与えた影響も見過ごせない」、「日本語でのコミュニケーション能力が著しく低いため、保護処分による更生援助は困難で、実効性は乏しい」などとして、刑事処分が相当と地裁に逆送したものです。

懲役1年4ヶ月、執行猶予3年  ~多くの支援者が支えた裁判~

8月3日、Aさんの公判が広島地方裁判所・第304法廷で開かれ、スクラムユニオンひろしまや大学の先生、牧師や市民など支援を続けてきた皆さんと傍聴しました。以下、その裁判を報告します。

起訴内容の確認、弁護人と検察による質問、裁判官からの質問の後、検察側から「『出産すれば帰国させられる』と考え、経済的利益を優先させ遺体を埋めた犯行は自己中心的で悪質。情状の面もあるが責任は重く厳罰に処すべき」と、懲役1年6ヶ月が求刑されました。

これに対し弁護側からは、「保釈中、男児の遺骨を引き取り、反省と贖罪の思いを込め供養を続けている。管理組合や多くの支援者のサポートで日本での技能実習を継続するために日々努力しており、社会内での更正の可能性が大きく、執行猶予で更正のチャンスを」と意見が述べられました。

「最後に一言何か言いたいことがありますか」との裁判長の問いかけに、Aさんは「色んな人に迷惑をかけてしまった。異国で頑張ろうと来て、異国で犯罪を起こしてしまい申し訳ありません。子どものために毎日お祈りをしているが、どれだけ悔み、反省しても自分の言葉で言い表せない。家族や亡くなった子どものために頑張っていく」、「私がこんなことをしたのに、日本の周りの人が最大限のサポートをしてくれて、感謝の気持ちを忘れない。その方たちに恩返しをするために悪いことをせず、周りに困っている人がいたら恩返しをしていく」と話しました。

30分の休廷の後、初公判当日に裁判は結審しました。

裁判長から「懲役1年4ヶ月、ただし執行を3カ年猶予する」との主文に続き、「若年で経験が浅く、日本語も十分でなく妊娠について相談できなかったことは同情するが犯行は短絡的だ。亡くなった男児に対する行為は、一般的な宗教的感覚とも異なり責任は軽くない。しかし、前歴はなく素直に事実関係を認め、今後も支援者による支援が期待される。これらにより、直ちに刑を執行するに当たらない」と判決理由が述べられました。

判決後、裁判長からの「一つだけ伝えておきたい。今回のことで分かったと思うが、あなたの周りには多くの支援者がいる。亡くなった赤ちゃんのためにも、その人たちに力を借りて今度は道を間違うことなく過ごしてください」との言葉が印象に残りました。

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(支援カンパの呼びかけ)

「事件」はまだ終わっていない  ~彼女の人生と「事件」の背景にある課題~

Aさんを支援しカンパを寄せてくださった皆さん、本当にありがとうございました。多くの方々の物心両面にわたる支援に支えられ裁判は結審しました。

しかし、この「事件」の背景に潜む課題はまだ残っています。安芸津の「事件」が発生した翌月、5月には兵庫県篠山でもベトナム人技能実習生による同様の「事件」が起きるなど、後を絶ちません。

若いAさん人生も今からです。引き続き、Aさんが希望する日本での技能実習継続のための支援、実習を満了し元気に母国へ帰国するまでの支援を続けていきます。皆さまのご支援をあらためてお願い致します。

 2020年2月4日の「ヒロシマとベトナム」(その9)から6月6日(その13-2)まで計6回、技能実習制度の問題を取り上げました。その5ヶ月後の11月に志和町で出産間もない「幼児の遺体遺棄事件」が発生したのを受け、2021年12月5日(その19)から2021年6月5日(その25)まで7回、あらためて技能実習制度を取り上げました。

今回から幾度かにわたって3回目の「技能実習制度」シリーズを組みたいと思います。

(2023年7月5日、あかたつ)

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コメント

新聞では触れてなかった?ベトナムで妊娠のことを。    子供が園から、抜け出して、川で溺死。これは、ネット記事で、あることを連想しました。この子供は、常時見ていなければいけないようです。一人にしてはいけない。 新聞には、書けないことあるのですか。   ベトナムで妊娠は書いてはいけないこととは思えません。 また多くの支援者のことも、知りませんでした。裁判官はキチンとした人物、見識ある人物と思います。

匿名希望さん
コメントありがとうございます。返信が遅くなり、大変申し訳ありませんでした。
新聞で妊娠のことが触れていなかったとのご指摘、確かに8月4日付けの各紙は妊娠に関する記事は少なく、裁判に関する記事が主でした。
しかし、この事件が発覚した4月20日以降、幾度か各紙が詳細に報じていましたので、新聞に書いてはいけないことでなく、「何を主に報道するのか」ということだったのだと思います。
多くの支援者が技能実習生に寄り添い、裁判と同時に生活支援、そして社会的に更正ができる環境づくりに関わってくださいました。
裁判長が最後に実習生に投げかけた言葉は、社会的な更正を考慮した判決を出すに当たって、こうした支援者の果たした役割が大きかったことを、関係者にとどまらず伝えたかったのだと思います。
仰るとおり、「見識ある人物」だと思います。
ありがとうございました。

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