改めて考える朝鮮半島出身者の原爆犠牲者数―その3
講演会「朝鮮半島出身者の被爆の背景を考える」報告の最終回です。
市場さんが、講演の最後に強調したのは、朝鮮半島出身者の実態は、全く調査されていないと言うことです。
市場さんは言います。「岸田首相は、G7サミットで韓国・ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領と共に韓国人原爆犠牲者慰霊碑に参拝しました。ぜひ8月6日の平和記念式典でのあいさつの中で、朝鮮人被爆者の実態にきちんと触れて欲しい」と。
当時どれだけの朝鮮人が、広島で被爆したのか、そして何人が祖国に帰ることもなく被爆死したのか、その実態は、昨日紹介した韓国原爆被害者協会が発表した数字しかありません。
さらに市場さんは指摘します。
「広島原爆資料館の展示では『死者約14万人』の文字が映像で大きく映し出されるが、それに外国人が含まれるか否かの解説は何もない。原爆資料館のリニューアルに当たって『故郷を離れた地でー外国人被爆者』のコーナーが設けられたが、そこにも外国人の被爆状況を示す数字は皆無である。」
長崎との比較です。「長崎原爆資料館の展示では『死者推定 73,884人、負傷者推定 74,909人』という詳細な数に加えて、外国人被爆者数につき『朝鮮人=長崎市推定 12,000人~13,000人、鎌田貞夫ら推定 13,000人~14,000人、長崎在日朝鮮人の人権を守る会推定 22,198人』『中国人約650人』『オランダ・イギリス・オーストラリア約200人』という展示がある。しかし死者数は明示されていない」
この中の「死者推定 73,884人」という数字については、これまでに何度かこのブログで疑問を指摘してきましたのでここでは控えますが、少なくとも長崎では外国人被爆者について、市民団体の調査を含めて人数を明記していることは、広島との大きな違いです。
市場さんは、厳しくは指摘しませんでしたが、長崎と比べ広島の取り組みの弱さを指摘されたように受け止めました。
日本政府は、死者数を問われると「広島14万人、長崎7万人」と両市による推定を用いるのみで、実態を把握した形跡は全くありませんので、市場さんが言う、8月6日の岸田首相のあいさつで触れられることは、残念ながら想像できません。立憲民主党の辻元清美議員の質問に対し政府は「原子爆弾の投下による死没者数に関する新たな調査を実施することには考えていない」と回答していますので、これからも日本政府による調査に期待することは出来ないのが実情です。
これは、空襲による一般戦災者の被害実態についても言えることです。「国の誤った政策」によって進んだ戦争であったにもかかわらず、その被害の実態について調査すらしない政府の姿勢は絶対に許されるものではありません。
このような市民を犠牲にしても、その責任をとろうとしない姿勢こそ、「再び過ちを繰り返す」ことに繋がるのではないかと、私はいつも危惧しています。
今回の市場さんの講演は、そんな様々なことを改めて問いかける内容でした。
この講演会では、豊永恵三郎さんの特別報告「三菱元徴用工・被爆者裁判から韓国大法院判決までの軌跡」も行われ、午後3時30分に終了しました。
いのちとうとし
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