初代「原民喜詩碑」の銘板―つづき
広島県立図書館に展示された「原民喜旧詩碑-銘板・陶板-」の説明板の4項目目には次のように書かれています。
「傷ついた旧詩碑の銘板陶板は、預かっておられた民喜の実兄である原守夫氏のご厚情により、民喜自筆原稿『屋根の上』等とともに当館へ寄贈していただきました。(1978年2月24日受入)」
この文章から、「原民喜旧詩碑-銘板・陶板-」が原守夫氏が寄贈されたことがわかります。
ところが、次の5項目目を読むと、ちょっと疑問がわいてきます。5項目目は次のように書かれています。
「なお、この陶板が当館に至る経緯について、豊田清史氏は、次のように書いておられます。『傷つけられた陶板は一応制作者である名古屋の加藤唐九郞氏に送られ、すでに他人に渡っていたが、民喜の文学資料に大切な品と私は考え、唐九郞氏に交渉して返送してもらい、現在県立図書館の郷土資料室の陳列ケースに保管されている。(図書新聞1983年4月9日)』」
疑問とはこうです。4項目目を読めば、間違いなく「原守夫氏から寄贈された」ことがわかりますが、図書新聞に掲載された豊田清史氏の文章には、「豊田さんが、加藤唐九郞氏から返送してもらった」としか書かれておらず、原守夫氏に預けたという記述がないのです。そのため、5項目目では、豊田さんが寄贈されたとも読める内容なのです。
県立図書館は、図書新聞の復刻版を所蔵していますので、1983年4月9日号を見させていただき,確認したのですが、5項目目と同じ文章しか書かれておらず、原守夫さんの名前は出てきません。なぜ豊田さんが、原守夫さんの名前を書かれなかったのか、真意を推し量ることが出来ないのが残念です。
改めて調べていただいたのですが、県立図書館受贈品目録には、はっきりと「1978年2月24日に原守夫さんから寄贈を受けた」ことが記録されているとのことでした。
最後の6項目目は次のように書かれています。
「昭和63年に県立図書館が中区上幟町から現在の地に移転した後、長く館長室に展示・保管されていましたが、この度、広く公開するために、開架室で展示することにしました。(平成30年3月13日)」
このことと関連して脇康治さんの「図書館たより」・「出会い」には、次のように書かれています。
「それから(引用者注:「文芸大柿No.6発刊時」)約30年、県立図書館の書庫で偶然、旧詩碑の碑銘陶板に巡り会ったのです。陶芸家加藤唐九郞制作の、あの傷ついた陶板にです。私は運命的なものを感じました。旧館の時代には、郷土資料のコーナーに展示してあったのだそうです。
旧詩碑建設に努力された人びとのことばにあるように、『彼の平和への祈りを永遠に記念』するものとして、また、民喜を超えてヒロシマの『平和への祈りの永遠に象徴する』ものとして、現在、展示コーナーに展示しています。(9月29日まで)」
この文章から二つのことがわかります。
一つは、「旧詩碑の碑銘陶板」の展示には、「ヒロシマの『平和への祈りの永遠に象徴する』もの」としての想いが込められていること。
二つは、6項目に書かれた「昭和63年に県立図書館が中区上幟町から現在の地に移転した後、長く館長室に展示・保管されていました」は正確ではないということです。「正確ではない」というのは、脇康治さんが館長に就任されるまでは、「館長室」ではなく「書庫」に保管され、県民の目に触れることはなかったが、脇館長が見つけ出され、一時期展示コーナーに展示された後、館長室に展示され、ようやく平成30年(2018年)になって、現在のように常設で「カウンタ-」に展示されるようになったということです。
もし脇さんの目に触れなければ、今も書庫に眠っていたかもしれません。
ところで、私にはもう一つ気になっていることがあります。脇さんの「出会い」には、大柿高校の文芸誌だけでなく国泰寺高校の文芸誌「文芸進路」も紹介されていることです。文芸誌「文芸進路」には何が書かれているのか知りたくなり、国泰寺高校を訪ねたのですが、「文芸進路」はすぐに見つからず、所在を調査していただくことになりました。見つかれば、原民喜のことや詩碑のことがどんな風に書かれているか、ぜひ読みたいと思っています。
いのちとうとし
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