精神的原子の連鎖反応が物質的原子の連鎖反応にかたねばならぬ
「精神的原子の連鎖反応が物質的原子の連鎖反応にかたねばならぬ」
この言葉は、1962年(昭和37年)4月20日から始まった昼夜連続無期限の核実験抗議の坐りこみに参加された森滝市郎先生が、反核運動の「さとり」として、全世界に向かって宣言(注:先生の言葉)されたものです。今、この「さとり」は、核実験抗議の坐りこみの理念となっています。
坐りこんでいる前を往ったり来たりしていた小さな女の子の「座とっちゃ止められすまいでえ」のとのつぶやきの問いに対し、見つけ出された回答がこの言葉でした。
この思索の経緯については、先に紹介した「座りこみ10年の『前史』と理念」の中で詳しく紹介され、その後の森滝先生の著書の中に収録されているので、私も何度も読み返した文章ですが、ぜひ多くの人に読んでほしいと思います。
今日の話は、この「さとり」に使われている「精神的原子」という言葉の由来についてです。
私自身は長く、座りこみの「さとり」から生まれた言葉だと思っていました。しかし、最近になって改めて著作を読み直してみると10年も前に「精神的原子」につながる言葉を使われていたことがわかりました。
そのきっかけは、書棚にあった「平和をもとめて 長田新論文・追悼記」を最近手にした時です。この表紙の題字「平和をもとめて」は、森滝先生が書かれたものです。
この中で森滝先生も「幼き神の子の声を聞け」と題した「追悼記」を書かれています。内容は、長田新先生が、昭和26年(1951年)に広島市内の子どもたちから原爆体験の作文を集めて編集出版された「原爆の子」(注:現在は岩波文庫として発刊)に森滝先生の長男、長女が深くかかわったことなどについて書かれています。そして、翌昭和27年(1952年)2月27日に長田先生の呼びかけで原爆の作文を書いた子どもたちをねぎらう集会が開催され、その集会が自然発生的に「原爆の子友の会」の発会式となったことを紹介されています。
その発会式で、森滝先生は父兄(注:原文のまま)代表として挨拶をされたのですが、「精神的原子の連鎖反応」のつながる次のようなあいさつをされています。その一部を引用します。
「原子爆弾のあの大音響には私もびっくりしたのですが、考えて見ればしかし、その音響はたかだか2,30里位しか聞こえなかったのであります。ところが長田教授が発見し、結集された子供たちの精神的原子爆弾の音響は世界中にひびきわたったのであります。しかもかれはのろいと破壊の大音響であり、これはすくいと平和の大音声であります。小さきものに巨大な力がひそむことの発見という点では物理学的発見も教育学的発見も同じでありますが、精神的原子力の発見を伴わない物理的原子力の発見は人類の破滅を招く以外の何ものでもありません。」
「精神的原子の連鎖反応が物質的原子の連鎖反応にかたねばならぬ」のさとりが生まれた10年前に、すでに森滝先生の思想に「精神的原子」(ここではまだ「精神的原子力」となっていますが)という考え方があったと考えるのは、私の考えすぎでしょうか。
この「原爆の子友の会」の発会式のあいさつ文は、「長田先生から後日あの挨拶を是非書いておいてくれないかと熱心に頼まれましたので、私はそれを文章化してお届けしました。」ため、きちんとした文章として残っています。
「平和をもとめて 長田新論文・追悼記」の発行年は、「精神的原子の連鎖反応が物質的原子の連鎖反応にかたねばならぬ」の理念を確立された年の1962年の3月25日となっています。何か深い縁を感じます。
森滝先生の長田新先生への追悼記は、「核絶対否定への歩み」(広島県原水禁1994年3月25日発刊)には、「幼き神の子の声を聞け」のタイトルで収録されていますが、「核と人類は共存できない」(2015年8月6日発刊)には、残念ながら収録されていません。
「核絶対否定への歩み」は、森滝先生が生存中に編集された本ですから、ここに「原爆の子友の会発会式のあいさつ」が収録されているということは、先生のとって大切な文章だったことを示していると考えてよいと思います。
いのちとうとし
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