資料館視察後の各国首脳のメッセージと「広島ビジョン」
G7が始まった19日、原爆資料館下で岸田首相の出迎えを受けた各国首脳は、最初に原爆資料館を訪れました。その様子を、テレビを通じて目にしました。
最後に到着したアメリカ/バイデン大統領が資料館に入館して約40分後、各国首脳が資料館から出てきました。
館内の様子は、日本政府から箝口令が敷かれているということで、詳しい発表はされないままでしたが、その日の夕刻に放送されたNHKの「コネクト」に出演した被爆者の小倉圭子さんが、その時の様子を話してくれました。
「最初は、5分ぐらいと言われていたのですが、10分かそれ以上に話したと思います。質問もでましたので。場所は、資料館の展示室の中です。・・・」
残念ながら、その時の首脳たちの様子や反応は、「話すことが出来ない」と言うことでした。
オバマ大統領の広島訪問時と違い、資料館の見学時間も長くなり、被爆者の体験を聞くことも実現したようですので、その点は評価してもよいのではと思います。
各国首脳の資料館見学と被爆者の話を聞いたときの様子を今のところ具体的に知るすべはありませんので、最後に行われた各国首脳による芳名録への記帳の内容が一つの手がかりとなります。ようやく20日の午前になって、核保有国の首脳の記帳の全文が発表されました。核保有国の首脳の記帳文です。
【アメリカ・バイデン大統領】 「この資料館で語られる物語が、平和な未来を築くことへの私たち全員の義務を思い出させてくれますように。世界から核兵器を最終的に、そして、永久になくせる日に向けて、共に進んでいきましょう。信念を貫きましょう!」
【フランス・マクロン大統領】 「感情と共感の念をもって広島で犠牲となった方々を追悼する責務に貢献し、平和のために行動することだけが、私たちに課せられた使命です」
【イギリス・スナク首相】 「シェイクスピアは、『悲しみを言葉に出せ』と説いている。しかし、原爆の閃光に照らされ、言葉は通じない。広島と長崎の人々の恐怖と苦しみは、どんな言葉を用いても言い表すことができない。しかし、私たちが、心と魂を込めて言えることは、繰り返さないということだ」
バイデン大統領のみが、「核兵器を永久になくせる日」と核兵器の廃絶に言及していることが特徴のように思います。もちろん他の二人も原爆で犠牲になった人びとへの追悼の思いが込められており、「平和のために行動すること」「繰り返さないこと」を決意する内容にとどまり、「核兵器廃絶への決意」は語られていません。
私たちが、この内容を知ることが出来たのは、翌日になってからですが、資料館を見学して受けた思いが、発表されるであろう「広島ビジョン」にどう反映されるのか期待して待ちましたが、発表された内容は、それらが反映したものとはとてもいえないように思いまものです。
その冒頭で確かに「1945年の原子爆弾投下の結果として広島及び長崎の人々が経験したかつてない壊滅と極めて甚大な非人間的な苦難を長崎と共に想起させる広島に集った。」と核兵器の非人道性を謳ったともとれるよう言及していますが、「我々の安全保障政策は、核兵器は、それが存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、並びに戦争及び威圧を防止すべきとの理解に基づいている。」と、残念なことに依然として「核抑止力論」が政策の基本であることを明記しています。さらに「核兵器不拡散条約(NPT)は、国際的な核不拡散体制の礎石であり、核軍縮及び原子力の平和的利用を追求するための基礎として堅持されなければならない。」とあえて「核の平和利用」にまで言及していることを指摘しなければなりません。
また「ロシアによる核兵器の使用の威嚇、ましてやロシアによる核兵器のいかなる使用も許されないとの我々の立場を改めて表明する」としていますが、私たちが求めた「自らの核先制不使用宣言」については、言及されていません。
「広島ビジョン」についての評価は、今日はこれだけにとどめますが、私がどうしても違和感をもったことがあります。それは、私たち広島市民がG7サミット広島で最も関心を持っていた核軍縮の話し合いが、夕食をとりながら話し合われたことです。議長である岸田首相にとっては、その程度の位置づけだったのでしょうか。
皆さんはどう思われますか?
いのちとうとし
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