山下義信私案 原爆症患者援護法案要綱
今月7日のブログ(広島平和記念資料館企画展「広島戦災児育成所ー子どもたちと山下義信-」: 新・ヒロシマの心を世界に (cocolog-nifty.com))で写真で紹介した、山下義信さんの「私案 原爆症患者援護法案要綱」、原爆医療法につながる貴重な内容ですので、全文をきちんと記録して読めるようにしておきたいと思い、写真から拡大しながらワードで作りました。
山下義信(原爆資料館企画展パンフレットより)
私が写した写真では読みにくい部分があったのですが、原爆資料館で確認をし、全文を文章にすることができました。
以下にその全文を紹介します。
原爆症患者援護法案要綱-31.8.16-
(原爆障害者援護法案要綱と訂正になりました。)
- 国費により原爆症患者の治療を行うこととする。
原爆症患者については、次の如き特異性が認められるので,これが治療はすべて国庫負担によることが妥当と考えられる。
1 医学的にみてー治療は長期を要し、かつ、困難である。また、被害者は多数にわたり、かつ、遺伝的影響を残すとされるから、その研究・治療は、総合的で規模も大掛りであることを必要とする。
2 経済的にみてー右のように症状が特異であり、治療に長い期間と費用を必要とするので、個々患者にとって自らの治療の負担に耐え得ない。
3 政治的にみてー原爆症は国の責任において遂行した戦争による犠牲であり、これが治療も亦,国の責任で行われるべきである。他方、今日、国の責任において原子力科学及びその実用化の推進を取り上げているのであるからこれに随伴するであろう放射能障害の予防,治療、要は今後あるべき原水爆実験による被害の対策の樹立に対し、原爆症患者に対する治療から得られる治療から得られる知識は貴重な貢献をすることと思われる。
二,国費で治療を行う者の範囲は昭和二十年八月広島市及び長崎市における原爆症患者(当時胎内にいた者を含む。)とする。
三、本法による治療を行う者の決定は、先づ,被災者の登録を行い、次いでこれらの者の内から,具体的に治療を行う者の認定をするという二段の手続きをとること。
登録対象は、現に原爆症患者であるもの及び将来原爆症の発生する可能性のあるもの、すなわち、被爆の当時又はその直後に被爆地域にあったものとし、登録及び認定は、都道府県知事とする。
登録は本人又は第三者の申請によることとし、次に治療に行う者の認定に当たっては、厚生大臣の定める基準により諮問機関の議を経て決定する者とする。
四、治療を行う期間は、厚生大臣の認定するときまで継続すること。
また
五、治療を行う機関は、厚生大臣の指定する医療機関とすること。
また
六、医療機関の治療方針及び治療報酬は、健康保険の例により、それによることのできないときは厚生大臣が定めることとする。
また
七、生活に支障を来すため治療を受けることの困難な者に対しては、治療手当を支給すること。
また、
八、被爆者の健康管理を行うこと。
本人の意に反しない範囲で,登録の対象者である被爆者の健康状態を調査し、健康状態に関して指導と予防措置を講ずることとし、これが実施は都道府県を当らしめ,費用は国が全額負担する。
九、次のような義務規定を設けること。
1 治療を受けるもの及び健康管理を受ける者について、症状に関して、又、住居の変更等に関して届け出義務を課する。
2 治療の委託を受けた医療機関については、治療の経過等に関して,当該機関に対する報告義務を課する。
3 右の届け出、報告時期、様式等は、省令に委任する。
十、治療状況の報告を行った機関に対して、要した実費を支給すること。
いのちとうとし
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