4月15日、ドイツと日本の違いを見せつけた
4月15日、ドイツが脱原発を達成しました。この日停止した、ドイツ北西部に在るエムスラント原発など3基が送電網から切り離されました。原発の建物前では「原発がついに終わる」と書かれた横断幕か掲げられて、反原発団体はデモ行進をして集会を開いたとの報道がされていました。
ドイツは明日4月26日で、丸37年になる旧ソ連ウクライナのチェルノブイリ原発事故を受け、シュレーダー政権は2002年に脱原発法を成立させました。
その後のメルケル政権は福島原発事故前年の2010年、目標達成を10年間先送りしたのですが、翌11年の福島原発事故を受け、2022年までにすべての原発を停止するとの方針を決めたのです。
ドイツの首相もショルツさんに交代し、ちょっと心配もありましたが原発停止時期を約6か月間延長したものの、ついにこの日を迎えたのです。決断力と実行力には頭の下がる思いです。
もちろん原発廃止を決めたとしても、廃炉への時間や費用、放射性廃棄物の最終処分問題、再エネ拡大の行程などなど多くの課題が残っているのは当然です。しかし大前提の原発廃止を決めれば、国民の議論も進むと思います。日本の場合、同じ問題を抱えながらも「今だけ、金だけ、自分だけ」で「あとは野となれ山となれ」の無責任体質丸出しなら、市民の理解が得られるはずがありません。
わが日本、4月15日に札幌市で開催されていたG7気候・エネルギー・環境相会合での共同声明で、政府は行き詰まっている福島第一原発の汚染水放出に、G7のお墨付きを得ようと画策していました。
政府関係者の一部には、G7で結束できれば「処理(汚染)水の安全性をアピールできる」と思っていたようです。しかし別の関係者は、日本固有の問題を共同声明に盛り込むことへの疑問に加え、ドイツを意識して「難しいだろう」という意見もあったようです。
結論は日本政府の浅はかな目論見は、見事に外れました。政府の共同声明のたたき台には「廃炉作業の進捗と、IAEA(国際原子力機関)の厳格な審査のもと、人体・環境に影響のないALPS(アルプス・多核種除去設備)処理水の放出に向けた透明性のあるプロセスを歓迎する」と記していたようです。
往々にして私たちは、身内で考えが同じもの同士での話し合いで、結論を出すことは楽なことだと思うものです。でも政治を行う者は意見の異なる人や組織にこそ相手にして理解を得るか、自らの考えの変更、撤回も決断することが大切だと思います。
汚染水の海洋放出については、福島県の漁業者らは強く反対しています。中国・韓国・ロシア・太平洋諸島フォーラム(15カ国2地域)も懸念の態度を示していますし、日本国内にも反対論・慎重論も根強くあります。これらの人たちとの正々堂々とした議論をすることなく、汚染水放出をG7議長国という立場を利用して、すり抜けようとする考えは、まさにさもしく恥ずかしい限りだと思うのです。
G7気候、エネルギー・環境相会合では、ドイツから処理水放出の、歓迎は得られませんでした。会合に出席していたドイツのレムケ環境・原子力安全相は、会合終了後の取材に対し「東電や日本政府が努力してきたことには敬意を払う。しかし、処理水の放出を歓迎するということはできない」と話したそうです。これに対し、西村康捻経産相のコメントは「(汚染水放出を)着実に進めて参りたい」と報じられています。
木原省治
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聞きかじりのこと。フランスから電力を得る。フランスの電力源の内訳は、どうなっているのですか。ドイツがフランスから得る電力量は、ドイツ需要の何%ですか。
投稿: 白 | 2023年4月25日 (火) 00時31分
コメントありがとうございます。ドイツは太陽光・風力という再生可能エネルギーによる発電が現在40パーセント台の半ばです。30年度には80パーセントまでまかなう方針としています。国境を接しているフランスやオランダからの電力融通も可能ですが、どれくらいを融通するかは、調べてまたお答えしたいと思います。ちなみに設備構成では原発は約6パーセントでした。
投稿: 木原省治 | 2023年4月26日 (水) 08時59分
続いてコメントさせていただきます。
ドイツの電力輸出入の状況について、調べてみました。全体量の2021年のデータですが、輸入電力量が39テラワットアワー(以下、Twhと書きます)、輸出電力は54Twhとなっています。「1Twh」は10億キロワットアワーです。
対フランスでは2020年は輸出8.3Twh、輸入6.7Twhです。輸入より輸出の方が多く、周辺国から電力を買わないとやっていけないという状況にはありません。再生可能エネルギーが大きいデンマーク、スウェーデン、ノルウェーなどとを含め、周りの国の約9カ国と輸出入をしています。
引き続き、今後ともコメントをお願いします。
投稿: 木原省治 | 2023年4月27日 (木) 14時13分