平和教育の構築を!
23年2月8日の市教育委員会議において、広島市教育委員会が「平和教育プログラム」を改訂することが報告され、「ひろしま平和ノート」小学校3年生教材からの「はだしのゲン」削除が明らかになりました。市教委は、「漫画の一部を教材としているため、被爆の実相に迫りにくい」「浪曲は、児童の実態に合わない。鯉を盗む描写は、誤解を与える恐れがあり、補足説明が必要となるため、被爆の実相に迫りにくい」等と課題をあげています。
80年近く昔が舞台であり、現在の子どもたちにとって時代背景がわかりにくい部分があって当然です。しかし、その壁を越えて子どもたちの心に迫る普遍的な力が「はだしのゲン」にはあります。実際、現場の教職員は補足資料など工夫しながら授業をし、子どもたちはゲンを通して戦争や原爆の実相に触れ、中沢啓治さんが作品に込めた二度と戦争や原爆を繰り返させてはならないという強い思いや怒りを受け止めてきました。
市教委が「平和教育プログラム」の検証を行った有識者会議においても、議論の末に削除すべきとの結論に至った様子はなく、このたびの市教委の説明は到底納得いくものではありません。通常の授業のどの教材であっても、子どもの実態や地域の実態をふまえて授業づくりをするのは当たり前です。ましてや、人権や平和を学ぶことが教育の最上位目的であることを踏まえると、まさにこれは私たちの『本務』であり、業務削減すべきは全くそこではありません。
「はだしのゲン」については、2012年に学校図書館での閲覧制限を設けた松江市を始め、他の自治体や広島市にも、一部の人々からの圧力がかけられてきました。その状況を踏まえると、十分な理由もなく削除を決め「こういう大きなことになるとは思わなかった」という市教委の認識は疑わざるを得ません。
加えて、今回の改訂では中学校3年生教材から「第五福竜丸」を削除することもわかりました。広島市が核兵器禁止条約の締結を求めるのであれば、当然、核実験による被害や核軍拡競争の実相、核廃絶に向けたとりくみを学ぶ教材として欠かすことができないものであるはずです。
2014年度版 ヒロシマ平和カレンダー(広島平和教育研究所)
3月6日、広島県教職員組合(広島市教組と連名)、広島平和教育研究所、一般社団法人広島教育会館は、広島市教委に対し、教材としての評価を明らかにすること、削除に至った経緯を明らかにすること、削除を撤回し平和教材として活用すること等を求め、申入れを行いました。
現行の「平和教育プログラム」も、加害の歴史を学ぶものになっていない等の課題があります。今回改めて行政のつくる平和教育の限界も感じました。だからこそ、問われているのは私たち自身です。行政に平和教育の推進を求めるとともに、日本国憲法・子どもの権利条約の理念の実現をめざし、私たちの実践の積み重ねによって、ヒロシマの平和教育を構築していく必要性をひしひしと感じています。
【情報提供】
■現行の「ひろしま平和ノート」と改訂に係る会議の議事録(3月15日までDL可)
https://87.gigafile.nu/0315-cb735bb80fab0260f0f5f679df78e9f5
■オンライン署名:ヒロシマの心『はだしのゲン』を「平和ノート」から削除しないで!
広教組 頼信直枝
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