発送配電の分離は所有分離でなければならない
私たちの使用する電気は発電所で作られ、送電線を経由して変電所や電柱を経て届きます。大きく発電→送電→配電という行程を経ます。
これまでは、中国電力などの大手電力会社はこの行程をすべて担っていました。しかし福島原発事故を経験して「電力システム改革」を行うことになり、主に三つの「改革」が実施されたのです。
特に大きな改革は、2016年4月からの電力事業の全面自由化でした。自由化とともに、全国で約700社の「新電力会社」が生まれたとされています。大規模なところではガス系や通信系と呼ばれるもの、また再生可能エネルギーの電気を専門的に売るというのも作られました。
大手電力会社にとって、完全自由化は大きな脅威というほどの存在では無かったと思うのですが、電力市場にも自由競争時代に突入したのでした。
自由化になっても送電線や配電線は中国電力の独占物ですから、自由な競争を行うためには、発電部門と送配電部門をきちんとした形で分離するということが大切になってきました。
分離の形態には大きく「会計分離」、「法的分離」、「所有権分離」という三つの大きな形態があるのですが、中国電力は「法的分離」という形にしました。
2020年4月1日中国電力本体からの100%資本出資の子会社として、送配電会社「中国電力ネットワーク株式会社」が設立されスタートしたのでした。
私たちは分離1年前の2019年に開催された第95回株主総会で、発送配電事業の分離の形態は「所有権分離」とし、送配電事業会社の名称は「西日本電力ライフライン株式会社」とする株主提案議案が提出しました。分離の状態を明確にするために、あえて社名に「中国電力」という言葉を入れないようにしたのです。
自由競争を行う上で大切な情報は、お客さんの月々の電気使用量・名前・住所などの顧客情報です。「中国電力ネットワーク株式会社」はこれらの情報も、管理することになりました。
自由にお客が電力会社を選べるようになった中で、中国電力本体の営業部門も、「中国電力ネットワーク株式会社」が持っている顧客情報は、それを盗み見することはお客の「取った、取られた、取り返した」の競争上許されないことでした。
発送配電分離が開始された当初は、中国電力本体から送電会社である「中国電力ネットワーク株式会社」への職員の相互異動はしない(ノン・リターン)とし、会社建物内の構造も、しっかりと分離するなどの配慮を行うということにしたのですが、現在それがきちんと守られているのかどうかは、よく分かりません。
私たちが株主提案した分離の形態を「所有権分離」とし、送配電事業の会社名称を「西日本電力ライフライン株式会社」とする議案は否決されました。しかし、その提案の正しかったことが、昨年来から明らかになった「顧客情報の不正閲覧事件」によって証明されていると思っています。この度の事件については、新電力会社や消費者だけでなく、政府内からも強い批判が上がっています。
この事件は、公正な競争を阻害し、電力自由化の理念を踏みにじる行為で、福島原発事故の教訓も失った悪質な不正行為といえます。
事件の反省と責任を形にて、今後の自由競争を進めるためには、発送配電事業の分離は「所有権分離」とすることが求められていると思います。そうしないと同様の事件は、必ず起こるでしょう。そして多くの新電力会社が潰されてしまいそうです。
木原省治
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