「原爆供養塔の線香立て」の由来
平和公園の原爆供養塔の北側、納骨堂入り口に「献納」と掘られた縦約55センチ、横約60センチ、高さ約60センチの線香立てがあります。
今月の月命日法要に参加したとき気づいたのですが、右側側面には「鹿児島県鹿屋市西原町木場昭春」左側側面には「昭和38年8月贈」と刻まれています。
「なぜ鹿児島の人が?」ということが気になり、一緒に法要に参加していた元朝日新聞記者の宮崎さんに尋ねたところ、「共同通信の佐々木記者がそのことを詳しく調べて記事にしていますよ。佐々木記者は、今産休中ですけどね」と教えてくれました。
帰宅後、知り合いの共同通信の記者に問い合わせたところ、「記者は佐々木夢野ですが、ネット用に詳細を記したものがあります」とその記事のアドレスを教えていただきました。早速検索してみると、詳細の情報を得ることが出来ました。
それによると,佐々木記者は、2021年夏に「鉢の中がセメントのようなもので固められている。教えてくれた市民によると『以前は水が入るようになっていた』が、水をためる穴の部分がふさがれていた。原爆の犠牲者を追悼する大切な場所で、誰が何のためにこんなことをしたのか。」ということから取材が始まり、「そもそもこの鉢は何のためにここにあるのか」へと発展したようです。
佐々木記者の記事https://nordot.app/848107195526594560?c=39546741839462401には、「鉢の中がセメントで固められた」問題だけでなく、この線香立て(最初は、「花立台」として寄贈)がたどった経緯が詳しく書かれています。
私が知りたかった「なぜ鹿児島の人が寄贈したのだろう」ということも,きちんと取材され書かれています。
佐々木記者の了解を得ましたので、今日は、記事を引用しながら紹介したいと思います。
「商店を営んでいた昭春さんは、63年7月5日に商工会議所の仲間と広島旅行をし平和記念公園を訪れた際、『原爆ドーム前の花立て台がブリキや板で作られた粗末なもので、あまりに見劣りする』と心を痛めた。鹿児島に戻って鹿児島県肝付町の御影石の産地を訪れて鉢の製作を依頼し、7月29日に発送し、献花用として寄贈したという。総経費は1万円。広島『平和祈念館施設管理事務所』は『喜んで頂戴する。早速現場に備え付けたい』と回答したという。」「昭春さんのコメントも載っている。『8月6日の原爆記念日までに間に合わせようと急いだ。被爆者の霊が安らかに眠るよう役立てば幸いだ』」
これらの経緯がわかったのは、佐々木記者が取材を初めて寄贈者の遺族を見つけることが出来、そして昭春さんの長女から「地元の新聞に載った」との情報を得て、該当する新聞記事がないか鹿児島県立図書館に調べてもらい、今は廃刊となった「鹿児島新報に記事がある」と教えられ、たどり着いたようです。
また記事によれば、取材が始まった当初「鉢は市の所有物ではなく、設置目的も不明」と言っていた広島市は、その後の調査で寄贈された際の記録が見つかり「当初から市の所有物だったことが分かった」と明らかにしたようです。
この鉢の修復は、木場昭春さんの長男の「献花用ではなく今の場所のまま、砂を入れて線香を立てられるようにしてほしい」との希望で、焼香台として活用されることになりました。
その後、毎月の月命日の法要では、線香台として活用されています。
佐々木さんの記事には、これらの経緯が詳しく書かれていますので、ぜひ読んでみてください。
今回もまた広島の不思議な出会いに巡り会うことが出来ました。
いのちとうとし
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