設置から11年で変貌した原子力規制委員会
3月11日が来ると、福島原発事故から12年となります。事故の反省から、原子力規制行政は変化をしました。その一番の大きなものは、福島原発事故の翌年9月12日に原子力規制委員会が発足し、13年7月8日に「新規制基準」が施行されたことだと思います。
福島原発事故前の原子力行政は、原発の推進側と、それを規制する側の組織が同じ経済産業省の中に存在するという、「なれあい体質」の中にありました。この体制を直すために、原子力規制委員会設置法が12年6月に参議院本会議で可決・成立したのです。
原子力規制委員会の仕事は、改正された原子炉等規制法に基づいて①シビアアクシデント(過酷事故)対策を義務化する②最新の知見を新基準として、既設の原発に対しても適合を義務化する③電気事業法の規制下にあった運転段階における規制を原子炉等規制法に移す④40年運転制限制を導入すること、などが決められたのです。
原子力規制委員会は内閣からの独立性を高めるために、国家行政組織法第3条が定める「3条委員会」として位置づけられ、これまでの「なれあい体質」から独立性を強く打ち出したのです。
また運転基準よりも厳しいとされる「30項目の対策」を織り込んだ、「新規制基準」が作成されました。
原子力規制委員会の初代委員長になった田中俊一さんは、「新規制基準に合格したからと言ってその原発が安全だとは言えない。我われは新規制基準に適合しているか否かを審査しているだけだ」と発言しています。これは間接的に新規制基準では不足があることを指摘していると思われました。
新規制基準で不足していること、たくさん在りますが私が指摘したいのは、事故時における避難の体制が無いことと、無いために避難対策を審査する機関がないことです。
米国原子力規制委員会(NRC)は、避難体制についても規制・審査対象にしています。ニューヨーク州のロングアイランドという岬にあるショアハム原発を、避難計画が不備として運転を許可しませんでした。
日本の避難体制は各自治体が決めることになっており、原発を持っている自治体にはとても大きな負担になっています。
そして「40年運転ルール」は、これも福島原発事故からの大きな教訓でした。しかしこのルールが、岸田文雄首相の「ひと声」でいとも簡単に破棄されようとしています。原子力規制委員会の委員の中でも、「40年運転ルール」が現実的に撤廃されることに委員の一人が反対を主張されましたが、多数決という強引な手段で撤廃が決められてしまいました。
福島原発事故の体験から、あれだけ苦労して国民的な議論をして決めた40年ルール、これを後退させることは許せません。
山中伸介原子力規制委員長の「運転延長について規制委は意見を述べる事がらではない。それは政治が決めること」という発言、これは責任放棄の最たるものではないでしょうか。新規制基準は原則40年を決めているのですから。
もし40年ルールを撤廃するというのなら、40年という決まりで再稼働を容認した島根県は、あらためて再稼働の是非を判断することを求めるべきです。それぐらいが言えなくて、県民の代表者といえるのでしょうか。
木原省治
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