ベトナムの歴史(その21) 抗仏闘争-3の5
以前と大きく異なった抗仏・抗日闘争
前号まで日本軍の仏印進駐について見てきました。今号はその日本軍進駐期におけるベトナム解放(抗仏・抗日)闘争について見てゆきたいと思います。昨年10月20日の「ベトナムの歴史」(その16)で、100年余にわたるフランス植民地支配に抗する戦いを大きく3つに分け紹介しました。その「第3期、第二次世界大戦中の日本軍侵攻による『二重の軛』といわれる期間を含む1945年までの間」の解放闘争です。
1847年のフランス軍ダナン攻撃以来の抗仏闘争とこの間の戦いは、それまでの闘争と大きく2つの点で異なっています。一点目は、それまでのフランス植民地支配に対する戦いから、日本の侵略に対する戦いが加わった「抗仏・抗日闘争」です。二点目は戦いの質と量が大きく異なっています。すなわち、それ以前の阮王朝の官吏や軍人による勤王攘夷運動から民族の独立解放をハッキリと目指したこと。そして、労働者や農民、少数民族を蔑視した狭く孤立分散した勤王運動から、労働者・農民・商工業者、少数民族まで包含した幅広い戦線が作られてきたことです。
ベトナムの原風景で川下り!秘境!ヴァンロン自然保護区 本文とは関係ありません。 (YahooJapanより)
ベトナム独立同盟会(ベトミン)の活躍
その推進者はホー・チ・ミンに指導されたベトナム独立同盟会(ベトミン)です。日本軍がベトナム北部に侵攻した翌年、1941年5月19日に結成されます。日本軍の南部侵攻2ヶ月前です。幾つもの村々でベトミンは日本軍が強制買い上げ(徴発)した米を運ぶ運搬船を襲撃したり、日本軍の村襲撃を多大な犠牲を払いながらも撃退します。そうした戦いを通してベトミンは知識人や宗教家を含む広範な影響力と政治基盤を持つ政治勢力に成長し、正規軍・地方軍・民兵組織を中央から身近な村段階までつくりあげます。
日本軍のための米運搬船を襲撃したベトミン (岩波ブックレット 証言 昭和史の断面『ベトナムの日本軍』より)
1944年2月15日付けのインドシナ共産党の機関誌『解放の旗』第3号から引用した一節を紹介します。「現在のインドシナにおいて、日本の災禍は、種族、宗教、階級の別なく自由主義的・進歩的傾向を持つすべての人々の上にふりかかってきている。インドシナの土地で生活する外国人で日本侵略者の血の滴る手から抜け出ることを欲するものは誰でも、インドシナ人民とともに次の主要スローガンを掲げてインドシナ抗日民主統一戦線をただちに構築しなければならない。スローガンは、――平等・互助、――ベトナム独立である。」
独立を果たした「8月革命」
日本は泥沼化した中国戦線、サイパン、グアム島など南方諸島での全滅、ビルマやフィリピンとすべての戦線での敗北が続きます。そうした1945年3月9日、日本軍はベトナムの単独支配権を手にするためフランス軍基地を襲撃し、ベトナムから放逐します。前号まで数回にわたり報告した「200万人餓死」の最中、敗北避けがたい戦況のもと断末魔のあがきとしてこの作戦(明号作戦)が強行されます。
その5ヶ月後、日本は無条件降伏します。
1945年8月15日に日本が降伏すると、ホー・チ・ミン(当時はグェン・アイ・クォックと名乗っていた)は翌8月16日に全国一斉蜂起(8月革命)を呼びかけました。その結びの一節を紹介します。「親愛なる同胞諸君! わが民族の運命を決するときがやってきた。立ち上がれ、全国の同胞よ、我々の力をもって自らを解放しよう。全世界の多くの被抑圧民族が、いま独立をかちとろうと競って前進している。我々はこれに遅れをとってはならない。前進! 前進! 同胞諸君、ベトミンの旗の下に勇敢に前進しよう」と。
1945年9月2日、ホーチミン国家主席はバーディン広場で独立宣言を読み上げ、ベトナム社会主義共和国の前身であるベトナム民主共和国の誕生を告げた。(「ベトナムの声放送(VOV5)」より
そして、早くも9月2日にはベトナム民主共和国の臨時政府を組織し、「独立宣言」を発します。
しかし、日本軍に放逐されたフランス軍が再びベトナムに侵攻し、「ベトナム民主共和国」との新たな戦いが始まります。第一次インドシナ戦争と呼ばれる抗仏戦争です。
次号は1954年にディエンビエンフーでフランス軍を破るまでの戦いについて紹介します。
(2023年2月20日、あかたつ)
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