広島市の平和ノート「はだしのゲン問題」で広島県被団協箕牧理事長が申し入れ
広島市が作成する「ヒロシマ平和ノート」が次年度の改訂で「はだしのゲン」が削除される問題について、広島県被団協の箕牧智之理事長と前田耕一郎事務局長が、広島市教育委員会を訪れ、下記の内容の申し入れを行いました。私も箕牧理事長にお願いし、同行しました。
(前文省略)
1 まずお伺いします。
・「はだしのゲン」を「平和教育ノート」から削除するに当たって、これほどの反応がある重いものであることを想定されなかったのでしょうか。
広島市は、中沢さんの作品・活動を評価して名誉市民とし、また、一連の中沢作品の原画の寄贈を受けて、貴重なものとして平和記念資料館で管理していると我々は認識しています。
その中沢さんの作品の扱いについてより慎重な判断があってしかるべきではなかったかと思いますがいかがでしょうか。
(2) 新聞報道によって経緯を見ると次のとおりです。
識者や学校長たち13人の会議でプログラム全体の内容を検証。うちゲンの場面(1)(2)について「児童の生活実態に合わない」「誤解を与える恐れがある」との意見が出た。作中の別場面を引用する案も出たが、「漫画の一部を取り上げるだけでは、被爆の実態に迫りにくい」として、場面(3)も載せず、(被爆者の体験談に)差し替えることにした。」(2月17日中国新聞。( )部分と下線は被団協で挿入)
別場面の引用をせず差し替えることにしたとの結論に至る過程で、どれほどの検討がなされたのでしょう。会議録や決裁過程を示して議論の経緯と内容を教えてください。私たちは「はだしのゲン」には様々なエピソードがあり、切り口を変えることによって「はだしのゲン」を残す対応ができたのではないかと考えています。削除せず今回予定の体験記を加える方法もあったのではないかとも思います。どうでしょうか。
2 次に、外すことについての市側の対応についてです。
先にも触れたとおり広島市は中沢さんから作品原画の寄贈を受けて管理しており、広島市は事前に遺族の了解を得て原画を無償で利用できるようになっていると承知しています。
平和教育ノートに原画を使用するに当たって、広島市は遺族に了解を得たのでしょうが、使わなくなることについて報告したのでしょうか。
削除を決めたのであれば遺族に経緯の説明と感謝の意を込めて連絡するべきだったのではないでしょうか。それが無償で掲載を承諾している遺族への礼儀だと思いますがいかがでしょうか。
3 もうひとつ重要なことがあります。
ご承知のとおり原爆の使用がもたらす結果は酷いものです。多くの人が一時に死に、傷つき、後々まで苦しみます。そして、戦争も多くの酷い死をもたらします。
私たちはその酷さを子どもたちにしっかり認識して欲しいと思っています。そのことによって原爆・戦争はいけないとの考えを身につけることができると考えるからです
その点において私たちは「はだしのゲン」の果たしている役割を高く評価しています。
広島の子供たちには私たち原爆で被害を受けた者たちが肌身で感じた悲惨さ、酷さを知った上で「平和」を口にし、訴えて欲しいと思っています。
教育は本当に大切なものです。かつて我が国は、国民を、そして子供たちを戦争に協力させ渦中に巻き込んでいきました。その反省から現在の憲法があり、それに基づいた教育があります。過ちを繰り返さないため、「平和」についての根本を子供たちに理解させるよう力を尽くして頂きたい。それを心から願っています。
核、力による支配の脅威が大きくなっている今、広島の平和教育の重要性はますます高まっていると感じています。このことに心を致しながら教育を進められるよう強く念じ、申し入れます。
これに対し、広島市は「子どもたちにわかりやすい内容にしたいと思いで改正を検討したものであり、『はだしのゲン』を意図的に削除したものではない。高校生が使う『平和ノート』には、中沢啓治さんのことがそのまま残っている。今回の改正では、この部分だけでなく,他にもかなりの修正を行った」などの説明がありました。しかし、十分に納得のできる内容とはいえません。
また「これほどの問題になるとは思わなかった」との認識を示しましたが、これは「はだしのゲン」に対する認識の低さを示したものといえます。さらに「はだしのゲン」の著者中沢啓治さんの遺族に、未だ全く説明していないことも明らかになりました。頭をひねる広島市の対応といわざるを得ません。
広島市は、「この問題を審議した会議の議事録は、情報公開請求があれば公開する」としています。本来なら情報公開請求をしなくても,自らが情報を公開すべきだと思いますが、会議の内容を吟味する必要があると感じました。
いのちとうとし
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はだしのゲンを削除するとは・・・。あまりにもひどいですね。私はニュースを聞いてすぐに教育委員会に電話して問い合わせました。その中で、対応した職員が「作者の平沢さんでしたっけ・・・」と言ったので「平沢さん?」と聞くと、慌てて「中沢さん」と言い直したのです。これは職員個人の問題ではなく、原爆や被爆者の思いと関係ない「平和教育」の表れだと思います。広島市教育委員会は撤回すべきと思います。
投稿: ブロッホ | 2023年2月23日 (木) 07時11分
ブロッホさん
コメントありがとうございます。
すぐに教育委員会に電話で問い合わせをされたとのこと、迅速に対応に敬意を表します。
私も県被団協の申し入れに同席したのですが、部長の「こんなに問題になるとは思いませんでした」の発言を聞いてびっくりしました。世界の子どもたちが、「はだしのゲン」から原爆のこと、生きることを学んでいるというのにです。
広島市教育委員会が説明する以外の力が働いているように思われて仕方がありません。
最近の広島市平和行政は?と考えざるを得ません。
問題がこれで解決したわけではありませんので、問題提起を続けなければと思っています。
投稿: いのちとうとし | 2023年2月24日 (金) 13時43分