黒木秀尚著「医療は政治―地域医療を守る広島・府中市草の根住民運動の全記録」
15日のブログ「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県住民の会」17周年記念講演会: 新・ヒロシマの心を世界に (cocolog-nifty.com)で紹介した講演会が開催された同時刻に弁護士会館ではもう一つ大切な学習会が開催されていました。それは、「『医療を受ける権利の基本法』 制定を目指して」と題した広島弁護士会主催の公開学習会です。
講師は、府中市上下町にある黒木整形外科院長で地域医療を守る会顧問の黒木秀尚さんです。黒木先生と知り合ったのは、上下町を中心とした地域住民が2008年(平成20年)に府中北市民病院を縮小・統廃合問題が起こった時に協議・学習を通じて唯一の病院を守るために作られた「地域医療を守る会」の活動に私も何度か参加したことが契機でした。黒木先生の学習会にも参加したかったのですが、基地問題講演会には、講師として金子豊貴男さんが遠く神奈川から来られるということで、17周年記念講演会を優先することにしました。
黒木先生には、会えないと思っていましたが、ほぼ同時刻に両方の集いが終了したこともあり、偶然にも弁護士会階の1階で出会い、あいさつすることができました。
その時にいただいたのが「医療は政治―地域医療を守る広島・府中市草の根住民運動の全記録」です。
2008年以降の「地域医療を守る会」の草の根住民運動の全ての記録が綴られたA4判467ページの大部です。黒木先生がまとめられ、自費出版されたものです。
この本の「はじめに」で次のように指摘されています。
「新型コロナウイルス感染症や地球温暖化・異常気象による大災害、そして南海トラフなどの大地震の発生が予想される中、あなたの住んでいるまちで多くの地域住民が頼りにしている地域の公立病院(自治体病院)が、統廃合されて肝心な時に機能不全に陥っていたらどうでしょうか。『命を守る病院』公立病院が、突然、救急車で1時間以上もかかる遠くの病院に行政主導で再編統廃合され、機能も規模も地域の実情に合わない高齢者慢性期医療に特化した『命を終える病院』に縮小・リストラされたり、診療所になったところもあります。こうした事態が、全国特に平成の大合併後に各地で発生しています。」
政治主導で強行されている公立病院の再編統廃合に対し、どうしたら自分たちの命と健康を守ることができるのか、その解決の糸口を知ってほしいとの思いで13年間続けられた上下の地域住民を中心にした地域医療を守るための草の根住民運動の体験が、この運動を支え続けてこられた黒木先生の手によって10年以上の時間をかけてまとめられたのが、この本です。
そして「おわりに」でこう厳しく指摘されています。「日本の医療は、政治に従属させられ、コロナ禍で判明したように高齢者や、基礎疾患を持つ弱者が死に追いやられる『命の効率化』が発生しています。日本には患者の医療を受ける権利と医療従事者の権利を擁護する『医療基本法』の法制化が必要です。そして、これは医学の問題ではなく、医療制度、医療体制の問題、すなわち政治の問題です。猶予はありません。一刻も早く今の経済第一主義の新自由主義体制を改め、人の命、社会保障を第一とする政治に転換しなければなりません。」
私たちの運動の課題も提起されています。
「新自由主義が医療を壊す!」帯に書かれた言葉が、鋭く突き刺さります。
いのちとうとし
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