「核兵器なき世界」はどこにいった
昨日のブログでも触れましたが、岸田首相のG7参加国訪問のニュースの報道されるたびに、「何のための広島開催?」と改めて強く考えさせられます。
伝わるニュースは、武器の共同開発、軍事協力の強化など安全保障面での強化の約束だけで、多くの広島市民が期待する「核軍縮、核兵器なき世界に向けた道しるべ」が話し合われ、その一部でも宣言の中に盛り込まれるサミットとなるように岸田首相が、核国首脳に働きかけた様子は全くありません。
最終訪問地となるアメリカ・バイデン大統領との首脳会談では、もっとひどい内容が話し合われることは今から予想できます。
唯一核問題に触れたのは、ロシア・プーチン大統領の「核使用発言」を意識した「核兵器による威嚇や使用を断固拒否する」というものです。このこと自体を否定するものではありませんが、そこには「核使用の危機を防ぐ道は、核兵器廃絶しかない」という考えは、全くありません。「核抑止力」に頼る核政策からは一歩も抜け出ていないのです。
官邸ホームページより
思いだすのは、昨年6月に開催されたNATO首脳会合に、日本政府の首脳として岸田首相が、初めて参加したことです。NATOについて、外務省ホームページは次のように記載しています。
「北大西洋条約機構(NATO:North Atlantic Treaty Organization)は『集団防衛』、『危機管理』及び『協調的安全保障』の三つを中核的任務としており、加盟国の領土及び国民を防衛することが最大の責務です。」
NATOは、第5条で「欧州又は北米における一又は二以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国 に対する攻撃とみなす。締約国は,武力攻撃が行われたときは,国連憲章の認める個別的又は集団的自衛権を行使して,北大西洋地域の安全を回復し及び 維持するために必要と認める行動(兵力の使用を含む。)を個別的に及び共同して直ちにとることにより,攻撃を受けた締約国を援助する。」ことを定めた軍事同盟ですから、集団的自衛権はもちろん、軍備を持つこと自体を禁止した憲法を持つ日本とは相いれないものですから、その首脳会議には参加すべきでなかったのです。
軍事同盟であるNATO首脳会議に参加することがどんな意味を持つのかの論議も全くないままに、会議への参加が行われたこと自体、政治の危機といえます。
こうした流れの延長線上に、今回のG7メンバー国への訪問があると考えれば、「核なき世界」の理念が押しやられ、軍事協力強化のみが論議・確認されたのは、ある意味で当然のことのように思えます。
問題は、広島で開催されるG7サミットです。核軍縮や核廃絶を話し合うどころか、ロシア、中国に対抗する軍事結束を強化するための舞台となることが危惧されます。
県知事も広島市長も無条件といってよい程歓迎・歓迎ムードづくりに躍起ですが、それでよいのでしょうか。
確かに、両首長もそして多くの広島市民が「核国首脳が、原爆資料館を見学し、被爆者の話を聞くこと」などを求めていますが、G7参加国訪問のニュースを聞く限り、岸田首相がそうしたメッセージを伝えた様子はありません。
岸田首相の「核なき世界は、私のライフワーク」を言葉だけに終わらせないために、広島が、そして私たちが何をすべきか、何をするのか改めて厳しく問われる事態になっています。
いのちとうとし
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