23年、「核」と決別する年に―原発回帰は許されない
今年は「3・11」から12年、干支では一回りです。当然あの年もウサギでした。考えてみれば日本で原子力発電所が発電に成功したのが63年のウサギ、茨城県東海村のJCO臨界事故が起こったのも99年のウサギです。
12月22日、政府はGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議を開催し、原発回帰に向けての政策に転換することを決定しました。この春にも閣議決定しようとしています。
もともとグリーントランスフォーメーションとは、環境保護を表す「グリーン」と、変容を意味する「トランスフォーメーション」を組み合わせた言葉で、原発復活を意味するものではありません。
もっと詳しくいえば「温室効果ガスの排出原因となっている化石燃料などから脱炭素ガスや太陽光・風力発電といった再生可能エネルギーに転換して、経済社会システムの全体を見直すこと」とされています。欧米を中心にこれへの投資が拡大しているのです。例えば、2030年までに温室効果ガスを19年比で43%削減し、50年までには実質ゼロにするための戦略を打ち立てるというのが本質です。
なぜかわが日本の政治は、浅はかというか環境保護イクオール原発ということしか考えない知恵の無さしかないようです。報道も「原発回帰」をクローズアップしている節を感じます。
政府のGX基本方針では、原発活用策として①60年超運転、②再稼働促進、③核融合炉を含め次世代型原発建設、④放射性廃棄物への対応促進となっています。GX実施に向けて官民合わせてトータルで150兆円を投資するといいます。
GXを決めた実行会議の「有識者」13人は、オール原発推進派です。岸田首相から指示を受けた経済産業省の「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会原子力小委員会」の委員20名は、2名が原発に反対を訴えただけです。9月以来、これだけの委員がそれも5回の審議で、12月8日に、上に書いたような原発活用策を決めてしまったのです。
12年前の福島第一原発事故で、原発依存を下げて、再生可能エネルギーを拡大させよう、新増設は止めよう、原発の運転は40年を原則にしよう、発送配電分離を行い、電力小売りの全面自由化を実現し、広域的運用を強めようと決めたのです。もちろん不十分な部分はたくさんあり、まだまだ見直す必要はありますが、世論の大勢はその方向に向かっているのは間違いありません。
僕は楽観主義者ではありませんが、直感的な感覚でこの政策転換はうまく行かないだろうと思っています。
同じ考えの方が多いと思いますが、政治の場だけでなく多くのことを決める時に議論をしない、頭ごなしで物事を決めるという傾向が特に強くなったように思うのです。
平和公園内には「平和の鐘」が三つあり、いずれも核兵器全廃と恒久平和を伝えるために作られたものです。一つは、8月6日の平和式典で鳴らされる鐘、二つは、毎朝8時15分に鳴らされる鐘、そして三つめは、平和公園を訪れた人のために、自由につくことができる鐘です。
この鐘の表面には、国境のない世界地図が浮き彫りにされ、「世界は一つ」を象徴しています。撞座(つきざ)という鐘をつく部分は「核」との決別の思いをこめて原子力のマークになっており、反対側には、鐘をつく人の己の心を映しだすための鏡が入っています。
2023年は、核兵器としての「核」、民生利用としての「核」、ともに決別する年にしたいものです。
木原省治
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