中国配電職員弔魂塔
現在の中国電力が建つ広島市小町にあった事業所が、中国配電株式会社です。原爆資料館を出るとその足で、この中国配電株式会社の慰霊碑が建つ、寺町の本願寺広島別院を訪れました。
本願寺別院の東南角(正門入って右)、親鸞聖人の像の南側に立派な「中国配電職員忠魂碑」が建っています。
正面には「忠魂碑」と刻まれているだけで、「中国配電職員」の文字はありません。背面の文字は夕方だったこともあり、読みにくくきちんと読み取ることができませんでした。
広島市の「原爆関係の慰霊碑等の概要」によれば次のような碑文が刻まれているようです。
「昭和20年8月6日ノ戦災ニ因リ本社社員ノ前後非命ニ斃レシ者278名是レ皆国会再造ノ犠牲本社進展ノ礎石ト謂フ可シ慈ニ3周年二当リ僚旧均シク哀シミヲ新ニシ感ヲ増ス仍テ此ノ塔ヲ建テテ聊々追弔ノ情ヲ 表ハシ亦以テ永ク其ノ幽魂ヲ慰メント欲ス。昭和23年8月6日 中国配電株式会社取締役社長 島田 兵蔵撰並書」
この文を読んで二つのことに気づきます。
一つは、被爆後3周年という早い時期に建立されたことです。中国発送電株式会社中国支店原爆殉難者慰霊碑が建立されたのは、中国電力発足後の被爆後8年目ですから、この碑の建立はずいぶんと早かったことになります。二つは、占領軍支配下にあったためと思われますが「原爆」や「被爆」という文字が全く使われていないことです。
中国配電株式会社の原爆による犠牲は、11月2日のブログで「中国発送電株式会社中国支店の犠牲者」として紹介した本店の犠牲者163人、電業局、支店、被爆当時出張で広島にいて犠牲となった社員を合わせるとこの碑に刻まれているとおり278人となります。11月2日にも書きましたが、この犠牲者の中には、学徒動員され作業中だった第三国民学校の教師1名学徒9名の犠牲者は含まれていません。
本願寺広島別院に建つこの碑の前に立って「なぜこの碑は、ここに建っているのだろう?」と疑問が頭に浮かびました。
というのは、この境内には、親鸞聖人の像や鐘楼、納骨堂など本願寺広島別院ゆかりのものはたくさんあるのですが、私が気付いた限りで本願寺広島別院と直接かかわりのないものは、この中国配電職員弔魂塔しか見つけることができなかったからです。
気になったものですから境内を散策した後、事務所を訪ねて「民間の慰霊碑などは、この碑一つのように思えますが、どうしてこの碑がここに建立されたのか経緯をご存知ですか?」と聞いてみました。「確かに、言われる通りこの碑だけですが、なぜ中国配電職員弔魂塔がここに建立されることになったかは経緯を記したものがお寺に残っていませんので、はっきりしたことがわかりません」との答えでしたので、真相は不明のままです。
中国発送電株式会社中国支店原爆殉難者慰霊碑のことを調べている時から気になっていたことですが「毎年慰霊祭はどんな形で行われているのだろうか」ということでしたので、このことも本願寺広島別院の方に聞きました。「毎年中国電力の方によって慰霊祭が行われていますが、8月6日ではありません。8月6日より少し前に会社の役員数名がここに来られて、まず本堂で読経をした後、忠魂碑前で慰霊をされます。そしてその後に私たちも同行して大手町にある中国発送電株式会社中国支店原爆殉難者慰霊碑に移動して、そこでも慰霊の行事が行われます。」と教えていただきました。
忙しい中で丁寧に対応していただきました。
事務所では、この他にも被爆した納骨堂のことや被爆樹木ソテツのことなどいろいろなお話を聞かせていただきましたが、それは別の機会に紹介したいと思います。
いのちとうとし
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