日本発送電株式会社中国支店(現中国電力)の原爆犠牲者
日は、昨日のつづきで、日本発送電株式会社中国支店の原爆犠牲者数についてですが、昨日紹介したように、広島原爆戦災誌では、事業所名が「中国配電株式会社」となっていますので、これからは「中国配電株式会社」とします。
広島原爆戦災誌では、中国配電株式会社の小町の建物は、本店と紹介され、被爆時の出勤者は、272人だったと記しています。その他に爆心地から500メートルの近距離の研屋町(現在の紙屋町2丁目から立町附近)に「支店および広島電業局」があったとし、被爆時の出勤者は、支店7人、電業局59人としています。
死亡者については、本店では「272人のうち40人が即死、避難した232人のうち45人が、その後死亡した」とし、広島支店・電業局では「全滅のため、当時の状況を知る由もなし。当日の出勤者66人のうち、わずか10人がそれぞれ避難したが、これも一、二週間のうちに全員死亡したのであった。」と記されています。
そしてその後に、「被爆一か年以内における人的被害は次のとおりである。」として次の表が掲げられています。
読みにくいのですが、最後の犠牲者数の合計は、274人となっています。備考には「一、学徒動員第三国民学校生徒9人の死亡は含まれていない。二、死亡者は社会勤務中がほとんどで、出勤途上その他社外の被爆死亡者を少数含む。三、尾道、呉両電業局の各一人は、当日広島出張中であったものである。」と書かれ、本文中に本店のうちには、「中国配電青年学校の教職員八人生徒49人も含まれる」としています。広島被爆戦災誌に記載された中国配電株式会社の犠牲者の合計は274人ですので、碑の来歴に刻まれた犠牲者数169人とは、あまりにも開きが大きいのが気になります。
広島市のホームページに書かれた来歴の犠牲者数は、何を根拠に記載されたのか、広島市に問い合わせたいと思います。
備考に書かれていた第三国民学校の生徒について本文で「広島電業局に学徒動員されていた第三国民学校の高等科二年生の生徒20人ばかりが、小町本社の構内の空き地で、建物疎開によって回収された電線などの修理に着手していた」と書かれていますが、この子どもたちの犠牲者数は、備考に書かれているように具体的に数字が示されていません。
第三国民学校の生徒の犠牲者数が気になりますので、学校の被災状況が書かれている広島原爆戦災誌の第4巻を調べました。第三国民学校は、現在の広島市立翠町中学校です。「当時5カ所に教職員12人、生徒約299人が、学徒動員されていました」とし、その内、中国配電株式会社(所在地広島市立町)には、「教員1人、生徒20人が動員され、教員1人生徒9人が死亡した」と記述されています。
もう少し読み進むと気になる記述があります。「被爆の惨状 人的被害」では次のように書かれています。「また、中国配電株式会社(立町)に出動していたものは、炸裂直後、チリヂチになった上幟町の泉邸(現縮景園)方面その他へ逃げたが、ここでの犠牲者は即死を含め引率教師1人と生徒9人であった。」
野村不動産ビル(同ホームページより)
しかし、もしこの記述どおり爆心地から500メートルの立町(現在の野村不動産ビル:中区立町2-23当り)で被爆していたのであれば、同じ広島原爆戦災誌の中国配電株式会社の広島支店・電業局の項に書かれていた「全滅のため。出勤者66人のうち、わずか10人がそれぞれ避難したが、これも一、二週間のうちに全員死亡」と同じように、教師1人生徒20人全員が犠牲になっていたはずです。
第三国民学校の生徒の犠牲が9人にととどまったのは、広島原爆戦災誌の中国配電株式会社の項に書かれていたように、動員先は立町の中国配電株式会社だったのですが、当日の作業場所は、小町の本店だったと考えれば納得できます。
改めて原爆被害の実相を正確に知ることの難しさを知ることになりました。
いのちとうとし
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