ベトナムの歴史(その15-2)
フランスによる植民地支配-1つづき
「19種類の税」といわれていますが、実際はその数倍の重税
フランスによる過酷を極めた搾取と収奪は、「その搾りとる名目の数々はこまごまとして、すべてを言うわけにたえないからその大きなものをあげて、わが輩(ともがら)に聞いていただきたい」と、〔3.フランスのベトナム支配の実情〕を書き進めています。
- その1・田畑税=土地を上等・中等・下等3ランクに分け課税。課税対象の田畑は増えず荒地が増えたことから、税を重くし荒れ地を耕せざるを得ないように追い込み、増えた田畑に課税。最もあくどいのは土地簿の面積を水増改ざんする。
- その2・人頭税=公捜銀と呼ばれ成年男子一人につき毎年金2元2角。人頭税のほかに労役税(公益銀)毎年八角、計3元。しかも毎年のように増額される。
- その3・家屋税=上等(年90~100元)・中等(50~60元)・下等(20~30元)の3ランク。家屋の梁から窓、戸まで別に税がかけられ、さらに家の前後は「堂軒税」、軒の下は「庭税」、庭の外は「門欄税」、門の外は「園居税」がかかります。
- その4・渡頭税=数尺幅の河川でも渡し場で徴収。大きな渡しは一回毎に銀30~40文、小さな渡しは銅銭30、40文。
- その5・生死税=子どもが生まれるとフランスの役所で出生を届け、「初丁税」(2元)を払う。死亡した時には役所に検死願を出し、「官験税」(5元)払う。
チャウの記述は〔その19・煙草・小売税〕まで続きます。「19種類の税がかけられていた」とよく言われますが、その中身は決して19種類どころではありません。その数倍以上です。
1890年後半のアジアの植民地
1894年の日清戦争後、日本は対話を割譲し西欧列強と共に植民地支配国になりました。
妻子を売って「天」を買い戻した村人
チャウは、「ここに、一つ泣いてよいのか、笑ってよいのか分からない小さな出来事がある」と、次の話を書いています。ある村があった。盛んな時は壮丁(そうてい)(注3)の人数が多かったが、兵火のためその大半を失った。しかしフランスは戸籍を増やすことはあっても減らさない。村は赤貧洗うが如く、公捜銀・公益銀(注4)を払おうにもどうにもならない。
皆で集まり相談したが、「ここまで追いつめられては、もう天に逃げることもできないし、地にもぐる術もない。連れだって保護管に訴え出て、焼くなり煮るなりしてもらおう」と泣訴に及びます。
ところが、保護管は「お前たちはどうして妻子や家や土地を売り払わないのか!」と責め立てます。
村人は慌てて、考えもなく泣き声をあげ「妻子も売りました。家も売りました。土地も売りました。売っていないのは頭の上の天だけでございます」
保護管は、「なるほど、なるほど、お前たちは天をまだ売っていないのだな。ならば、その天を俺に売ってくれ」と、村人に「天を売る」という証文を無理矢理書かせ指判を押させます。
書き終わると村人は追い返され、「役人はどうするつもりだろう」と話しながら村に帰りました。
ところが、村に帰り着き家にも入らない間に、一隊の警察兵が村をびっしりと取り囲みました。
そして、「お前たちからこの村の天を買った。だから天の下を歩いたり、天の光を浴びてはならぬ。家から顔をのぞかせば死罪だ」と、水も漏らさぬ見張りの下におかれます。
進退きわまった村人は哀訴し、村の上の天を購い戻すことを乞いました。
こうして本当に妻子を売り、家を売り、土地を売って、やっと捜銀を納め、天の下に住めるようになったとのことです。
この写真は文中とは関係ありませんが、ベトナムの著名な画家、ター・トゥック・ビンが描いた1960年代の農村の風景です。
その頃、「何がなくとも青空だけは、やはりなしでは済まされぬ。妻も子も田畑も売って、買い戻してはみたものの、おいらにゃ冷たいお天道様よ」という俗謡が歌われたとのことです。
笑ってよいのでしょうか、泣いてよいのでしょうか・・・・・皆さんはどのように思われますでしょうか。
恐らくその答えは、107年にも及ぶ不屈の抗仏闘争を闘い抜き、1954年5月にその支配を打ち破ったベトナムの人たちの心の中にあると思います。しかし、フランス撃退で終わりではありませんでした。フランスに代わってアメリカが侵攻し、1975年4月30日までベトナム戦争が続きます。これらは後々見てゆきたいと思います。次号では、抗仏闘争を見てゆきたいと思います。
(注3)壮丁 成年に達した男子、血気さかんな働きざかりの男子、壮年の男子。
(注4)公捜銀・公益銀 頭税と労役税
(2022年9月21日、あかたつ)
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