8・15のつどい
2002年から、毎年8月15日に開催されてきた「8・15のつどい 反戦・原爆詩を朗読する市民のつどい」が、今年は会場の都合で8月14日に広島市まちづくり市民交流プラザで開催されました。
「8月15日」を改めて問い直す企画として広島文学資料保存の会、広島花玄忌の会、四國五郎追悼の会の三団体が主催し、毎年8月15日の午後に開催されてきました。私も数年前から、参加しています。
例年、第一部では、原爆詩・反戦詩が朗読されてきましたが、今年は朗読劇「神部ハナという女の一生」が、上演されました。
「神部ハナという女の一生」は、もぐり助産婦の神部ハナが、堕胎罪に問われながらもしたたかに生きていく様子が描かれたものです。最後のシーンで、神部ハナは原爆症で命を失う構成になっていますが、なぜ今年は、この構成詩なのか?ちょっと疑問符が付くものでした。
例年通り、集会のタイトル通り「反戦・原爆詩」、例えば原民喜の詩の朗読が行われればよかったのに、というのが率直な感想です。
第二部は、「今、改めて四國五郎を思うーウクライナ。核・表現の不自由―」と題した元NHKプロデューサーで武蔵野大学教授の永田浩三さんの講演です。永田さんは、2016年に発刊された「ヒロシマを伝える 詩画人・四國五郎と原爆の表現者たち」の著者です。
永田さんの話は、被爆直後から朝鮮戦争の時代にかけての広島の反戦・平和運動の歴史を、四國五郎さんの様々な詩を間に挟みながらたどるものでした。冒頭は、いま安倍前総理の死去の後に起こっている出来事、特に国葬の問題を問う内容でした。メディアで批判されている朝日新聞の川柳の紹介もありました。その一つです。「忖度は どこまで続く あの世まで」 言い得て妙の川柳ですが、恥ずかしながら、私自身はこの場で紹介されるまでよく知りませんでした。
永田さんは、四國五郎の詩だけでなく、大田洋子の小説「屍の街」や原民喜の「水ヲ下サイ アア 水ヲ下サイ ノマシテ下サイ」、正田篠江の短歌、栗原貞子の「ヒロシマというとき」などが紹介され、ほっとしました。
もう一つ、永田さんの話で初めて知ったことがあります。日本人が最初に写真で原爆の惨状を知ったのは、1952年8月に発行された「アサヒグラフ」の特集だと言われていますが(私もずっとそう思ってきた)、それより2年早く1950年6月9日の「平和戦線」という本だったことです。下関でこっそりと4万部印刷されたそうですが、まだ占領下、プレスコード(占領軍による事前検閲)下でしたので、即時発行停止処分になり、世には出なかった様です。
興味深い話が続きましたが、最後に「『自由にものが言えない社会』にしないためには、市民がさまざまな声を上げ、表現を止めないことだ」ということを強調し、「表現者はカナリヤ 闇を照らすともしび 世界に輪郭を提供する 絵画や言葉で」と結んで、講演は終わりました。
広島は、8月6日だけでなく8月15日をどう過ごすのか、問われる時代になっていると思います。
いのちとうとし
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