「レクイエム碑(いしぶみ)」コンサート
少し前になりますが、先月31日に県民文化センターで開催された県立観音高校音楽部OB合唱団の第19回祈念コンサート(混声合唱)「レクエム碑(いしぶみ)」に行ってきました。
ここ2年間、コロナの感染拡大で中止されていましたが、コロナ対策の準備や工夫を重ねて、この日を迎えたようです。会場は、ほぼ満席の状態でした。
県立観音高校音楽部OB合唱団は、2001年に発足し、その翌年から、観音高校の前身である旧制広島二中1年生の被爆悲劇を綴った‟レクイエム「碑」“祈念コンサートが始まり、今回で19回を迎えました。
私が、最初にこの祈念コンサートを聞きに行ったのは、2019年です。この合唱団を指揮されている益田遙先生から誘いを受けたことがきっかけでした。益田先生は、昭和39年度(1964年度)から昭和50年度(1975年度)まで、同校音楽部の顧問をされており、このOB合唱団のメンバーもその時、指導を受けた合唱部員で構成されています。
コンサートは、二部構成で、「混声合唱のためのレクイエム『碑』」は、第2部です。
「混声合唱のためのレクイエム『碑』」は、広島に投下された原爆により全滅した広島二中の一年生の、被爆の瞬間から全滅までの惨状を、生徒たちの学校生活の様子を交え、全9章「序章、点呼、爆発、川の中で、時間割、まさちゃんのお母さんよ、船の中で、全滅、終章」で構成されています。
作詞者である薄田純一郎さん(同校の20回卒業生・昭和16年入学)は、県立広島第二中学校創立50周年(1972年)に発行された「記念誌」に寄せた手記で、「碑」が作られた経緯を次のように書いています。少し長いのですが、該当する部分を引用します。
「本川土手で全滅した一年生の様子は、機会をえて昭和44年(1969年)に勤めている広島テレビ放送で、テレビ番組として放送することができた。母校だからというのではなく、それはあの惨状を目撃した生き残りの人々が誰しも思う、広島の怒りを語りたい衝動を、一年生の行動なり言動を通して表現したかったのである。プロデューサーとして制作にあたり、全国放送のネットにものって芸術祭優秀賞もうけた。
この『碑』は、その後に児童生徒向きの本に書きあげてポプラ社から出版され、また当時二年生であった広島メンネルコールの山本定男氏の依頼で、先輩の森脇憲三氏の作曲になる男性合唱のためのレクイエム『いしぶみ』にもなった。
最近、東京、大阪大学合唱団であいついでこの合唱曲がとりあげられた。作詞者としてまねかれ、いまの若い世代が広島二中の一年生の運命をどう受け止めているかに接することができた。それは怒りであった。広島二中の一年生に象徴される広島の悲劇を痛恨としかいいようのない気持ちで感じていたのであった。生き残ったものの務めを幾分なりとも果たしたような気がするである。
聞けば、あの土手の慰霊碑は在校生によって、いつも清掃されているそうである。戦後すぐ、木の墓標が建ったことを知るものとしては心うれしいことである。青春が、学業が唯一の思い出となる時代に、こうした記憶を持つことはつらいが、それはまた青春の大切さをひしひしと胸にせまってくるものである。新しい時代には新しい力が必要である。そんな思いをこめて合唱曲『いしぶみ』の最後をこう結んだ。
子らの声聞く人あれば
広島の心が聞こえる
広島を思う人あれば
広島は永遠にあり」
男性混声合唱曲としてスタートしたこの曲が、混声合唱版として初演されたのは、1975年7月のことのようです。
コンサートが終わると、本川土手に建つ広島二中の慰霊碑に頭をたれて、帰宅しました。
いのちとうとし
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