なぜ理由が説明できないのですか?
8月24日広島高裁で、安保法制違憲訴訟山口訴訟の会が提訴し、昨年7月21日に山口地裁判決で敗訴した「安保法制違憲訴訟」の控訴審の第1回公判が開廷されました。
当初は5月25日に予定されていましたが、裁判官の一人がコロナに感染したため延期となり、3カ月遅れの第1回公判となりました。山口の訴訟団ですので、参加が難しく傍聴者も少数になることが予測されたため、広島の原告団に傍聴要請があり、私も参加しました。
控訴審の第1回ということで、控訴人(第1審の原告です)の代表藤井郁子さんが意見陳述されました。藤井さんは、萩市在住(後で知ったのですが、萩市でも一番島根県よりの田万川在住)ですので、萩市のむつみ演習場に配備計画が浮上したイージス・アショアの問題を訴えるとともに、お父さんの戦争体験(シベリア抑留)を話しながら、「戦争は絶対悪」だと強調し、安保法制は憲法違反であり、廃止すべきだ」と訴えました。限られた時間での意見陳述でしたが、思いの伝わる内容でした。
続いて、弁護団長の内山新吾弁護士と田畑元久弁護士が、ウクライナ戦争、最近の北東アジアの政治状況を説明しながら、「安保法制が日本の戦争への危機を高めている」ことの意見陳述を行い、新たな情勢の中でのきちんとした審理を求めました。
その後、今後の裁判を進め方進行協議が行われました。
今日書きたいことは、ここからの出来事です
その中で、突然と言ってよいと思いますが、横溝邦彦裁判長から「今日で審理を打ち切り結審とします」と発言がありました。たった1回の審理で、判決を出すというのです。
これに対し控訴人弁護団内山団長がすぐに立ち上がり次のように発言しました。「今日で結審するのは納得できない。私たちが、二人の参考人を申請していたはずだが、どうなったのですか」と質すと、横溝裁判長は「参考人は採用しません」の一言。「採用しない理由は何ですか?」と内山弁護団長。「理由を説明する必要はありません」と裁判長。これに対し内山弁護団長は「きちんと理由を説明してほしい、原告、傍聴者がこれだけいるのですから」と迫ったのですが、裁判長は「説明しません」をくり返すのみで、「参考人を採用しない」理由は明らかにされませんでした。
びっくりしました。「なぜ?理由ぐらい説明すればよいのに」「説明できないような理由があるのか?」私の率直な感想です。裁判長の横暴です。
さらに内山弁護団長が「参考人が採用されないのであれば、これに代わる補充の書面を提出するので、時間が欲しい」と要望しましたが、これも却下され「判決期日は11月7日」と通告し、公判は打ち切られ、閉廷となりました。
控訴人も弁護団も指摘したことですが、昨年7月に山口地裁判決が出て以降、ロシアのウクライナへの侵略、米国ペロシ下院議長の台湾訪問による台湾問題の深刻化など日本を取り巻く安全保障環境は大きく変化しました。当然のことですが、高裁では、こうした国際情勢の変化が安保法制にどう影響するのかを検討しなければならなかったはずです。
こうした控訴人弁護団の指摘を全く無視した裁判進行は、裁判長の横暴と言わざるを得ません。「証人申請却下の理由を説明しない」「第1回の公判で審理を打ち切る」、これでは裁判はますます国民から遠いものになってしまします。
後の報告会で「横溝裁判長は、11月下旬に65歳の定年を迎えるので、その前に自分で判決を書きたかったのでは」との声もありましたが、仮にそんな理由で審理が打ち切られたとしたら、たとえどんな判決が出ようとも、「審理をつくした裁判」ということはできません。「裁判の私物化だ」とまで言いたい思いです。
どうしても納得のいかない、この日の公判でした。
いのちとうとし
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