ヒロシマとベトナム(その33) 少数民族の子どもたちへの奨学支援シリーズ2
-貧しい少数民族村はベトナム戦争の激戦地-
ベトナムは54の民族が暮らす多民族国家です。いわゆる一般的に「ベトナム人」と呼ばれているキン族(ベト族)が86.2%と圧倒、53の少数民族が13.8%です。主な少数民族ではタイ―族、タイ族、ムオン族、クメール族、ホア族、ヌン属、モン族の7民族がほぼ10%、残る46の民族が約4%です。
私たちが奨学支援しているクアンチ省にはヴァンキュウ族、パコ族、タオイ族、コトゥ族、ブル族、ホア族などが、ラオスとの国境に沿って延びるチュオンソン山脈に暮らしています。耕地は少なく、焼き畑農業と山あいの急斜面に植えられたパルプ材を主とした林業で得る収入は年間に数万円程度。学校の教材や学用品も乏しく村の診療所にはベッドと血圧計のほか医療器具も見当たりません。
下の写真は2009年10月、初めてパコ族の村を訪ねたときのものです。もの凄いスコールが赤土の斜面を叩き、高床式住居の下を泥水が走る中をやっとの思いで辿り着いた小学校です。好奇心と戸惑いが入り交じった子どもたちの笑顔に迎えられた教室にはドアも窓もありません。
クランチ省パコ族の小学校 2009年10月
下の図はJICAが2012年に作成したベトナムの「地域別貧困率」を表した地図です。ちょうどパコ族の村を訪ね、奨学支援を始めた2009年の状況を示したものです。貧困率が最も低い濃い緑から、最も貧困率の高い濃い赤まで色分けしてあります。地図上の①北部国境の山岳地域ラオカイ省やディエンビエン省と、地図の真ん中辺り②に濃い赤色の地域があります。ここが「ベトナムで最も貧しい省の一つ」と言われるクアンチ省です。クアンチ省の南(地図上の③)、“ベトちゃんドクちゃん”が生まれた中部高原地域コントウム省なども貧困率が高い地域です。
ちなみに、コントウム省は1961年8月10日、米軍がベトナムで最初に枯葉剤を散布したところです。
JIKA作成2009年当時の地域別貧困率
こうして見ると、貧困率の高い地域は少数民族が暮らしていること、そしてベトナム戦争が激しく戦われた所だということがよく分かると思います。ディエンビエン省ではなくディエンビエンフーと言えば、ご存じの方もいらっしゃるでしょう。1954年にフランス植民地支配を破った有名なディエンビエンフーの戦いの地です。
そしてクアンチ省は旧南北ベトナム国境線が敷かれ、1968年に米軍を敗退させた「ケサンの戦い」、ベトナム戦争の帰趨を制した1972年の「クアンチ古城の攻防」が戦われた地です。中部高原地域もソンミ事件が起きたクアンガイ省などもベトナム戦争激戦地です。
ベトナム戦争の激戦地だった地域に暮らす少数民族を苦しめている不発弾や地雷などによる被害、2009年から10数年経た今日の少数民族の暮らしなど、もう少し「少数民族の子どもたちへの奨学支援シリーズ」を続けます。
(2022年7月5日、あかたつ)
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