様ざまな物の値段が上がっていますね。電気料金もしかりで、且つ電力需要量に対して供給量の余裕が少ない「電力ひっぱく」が大々的に宣伝されています。これに便乗して与党や一部野党からも、原発を動かしたら明日にでも「値上げもひっ迫」改善されるという感じで宣伝がされています。
電気料金の値上がり問題を考えるときの基本ですが、小麦の値段が上がっているからパンや麺類が値上げしているのと同じで、電力を作る原料費が上がっている??という理屈です。
しかし大切なことは、電気は石炭や石油、LNGといった化石燃料、原子力からしか作られるものではありません。
電気は再生可能エネルギーからも、たくさん作ることができます。
電気を蓄える技術も大きく進歩しています。
電気はどうやって私たちのところに届けられているのか、まず発電所で電気をつくり(発電)、その電気を電線で使って送り(送配電)、そしてそれぞれのお客に渡す(小売り)という、大きく三つの工程を経ます。
これまで、この大きな三つの工程は、中国電力や関西電力などという大手電力会社が独占的に担ってきました。ここからは、これらの会社を「旧電力」と書かせてもらいます。
しかし3・11福島第一原発事故を経験し、遅すぎという感でしたが「電力システム改革」という名の元、その形態を変えていくことになりました。
発電については、これまでの石油・石炭・液化天然ガス(LNG)といった化石燃料や原子力発電によるものから、再生可能エネルギーによる発電を主流にしようとなり、21年に策定された「第6次エネルギー基本計画」では、再生可能エネルギーによる発電を大幅に増やすことを柱としました。
送配電については、中国電力ではこれまで独占していた状態から、20年4月1日に「中国電力ネットワーク株式会社」が作られ、発送配電分離というのが形だけは出来ました。
福島事故後15年4月からは、全国の電力融通を指揮する「電力広域的運営推進機関(OCCTO『オクト』と読みます)」が作られ、全国の電力融通が可能となりました。しかし融通電力線の容量不足、そして周波数が日本列島の北側が50ヘルツ(㎐)、南側が60ヘルツ(㎐)という違いがあり、これらを改善する施設の拡充が指摘されていました。
小売り部門については、皆さんご存知のことと思いますが、16年4月から完全に自由化されました。自由化によって国内には700を超える新電力会社が誕生しました。
政府や旧電力は、これまで電力事業を「国策・民営」として営んできたことから、これら大きく三つの改革は本音とではやりたくなかったのです。特に再生可能エネルギー発電の拡大は、大きな抵抗がありましたし、送配電線を持たない新電力には嫌がらせのような妨害を受けています。
そして自前の発電設備を持っていない新電力は、全部または一部をJEPX(日本卸(おろし)電力取引所)から、電力を購入しなければなりません。この購入価格を市場価格といいますが、株式や原油の価格のように取引所で「売った、買った」で決まっているのです。
このあたりの話しから、皆さん分かりにくくなったかも知れませんが、市場価格は、需要量と供給量で変動しています。1日24時間を30分ごとの48に分けて、価格が変動しています。その動きに興味のある方は、ホームページの「JEPX取引情報」をチェックしてみてください。
ここからが肝心な話しですが、市場価格が昨年から大きく上がりました。これも基礎的な知識ですが、この市場価格は化石燃料の価格に連動しているのです。これを「調整料金」と呼び、こういう仕組みを「燃料費調整制度」といいますが、この価格が大幅に上がったのです。
もちろん需要量と供給量が電気の値段を変動させる大きな要素です。
1年間でもっとも電気使用量が少ないとされる、4月末から5月初めの連休期間中の5月3日、朝7時から16時までの値段は、1キロワット/アワーあたり0円でした。同じこの日でも、16時過ぎから値段が上がり23円くらいになりました。昨年の最高値は、60円くらいになったと思います。こんなになれば、仕入れ価格が上がる新電力はやっていけなくなり、倒産か身売り(合併)する会社が増えてしまいました。
JEPX(日本卸電力取引所)に「売り入札」を出すのは旧電力で、「買い入札」の大部分は新電力です。この市場価格が、昨年の10月頃から大きく上昇しています。この市場価格が上昇したキッカケは、昨年10月から、旧電力の売り入札の値段を、日本の天然ガス・スポット価格(JKM)にしてよいと、経済産業省が決めたことにあります。
福島原発事故後の電力システム改革を本気でやらず、大量に存在する再生可能エネルギーを、何やかやと「難くせ」をつけてきたこの国の政策の失敗だというしかありません。
木原省治
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