戦争になって犠牲になるのは―大田昌秀さんのこと
中国新聞の月曜日に1面全部を使って掲載される「平和」特集は、いつも心して読む記事の一つです。
数回前から始まった「森田裕美この一冊」のコーナーは「今回はどんな本が紹介されるだろうか」と最近では特に期待して待つ記事です。
昨日紹介された一冊は、元沖縄県知事で社民党の参議院議員だった大田昌秀著「沖縄鉄血勤皇隊」でした。そこに書かれているのは本の紹介というより大田昌秀さんがなぜこの本を出版されたのかが主に書かれています。
この記事を読みながら思い出したことがあります。一時期、同じ党所属の国会議員として様々な場で太田さんの話を直接聞き、意見を交換する機会があり、学んだことです。
そんな場で大田さんが繰り返し強調されたことがあります。それは私の戦争に対する考え方を方向付ける内容でした。
少し長くなりますが、1996年4月2日の沖縄県・名桜大学入学式における公園に加筆され、同年9月に発刊された「沖縄は訴える」からの引用です。この部分のタイトルは「平和・共生・自立 現代の戦争と平和」となっています。
「次に、わが県民に来るべき21世紀に向けて志向すべき点について述べたいと思います。まず平和についてであります。
(中略)核戦争の恐ろしさ、おぞましさは、今さら私が申し上げる必要もないのですが、今日の戦争の性格についてその一端を具体的に考えてみたいと思います。
第一次世界大戦の時の死者は、軍人が95%を占め、民間人の犠牲者はわずか5%でした。ところが、第二次世界大戦での犠牲者は、軍人が52%に対し、民間人は48%に増えています。では、太平洋戦争ではどうだったかと言いますと、日本本土では軍人の犠牲者が23%、民間人の死者が77%となっています。それが戦後の朝鮮戦争では、軍人の犠牲者は、15%、民間人の死者は85%です。さらにベトナム戦争では、軍人の犠牲者はわずかに5%なのに比べ、民間人の犠牲者は、実に95%におよんでいます。」
ここからが重要です。
「このような結果を見ると、軍事力でもって一般国民の生命、財産を守ることは、本当に可能だろうか、と反問せずにはおられません。よく国防とは、軍隊による国民の生命、財産の確保が第一の任務といわれますが、ひとたび戦争がはじまると、守護の対象となるはずの民間人が犠牲にならずにすむかと言うと非常に疑問です。真っ先に傷つくのはお年寄りや子ども、さらに身体の不自由な人とか、心を病んでいる人のように弱い立場の人たちであります。なぜかと言いますと、戦争で一番大事にされるのは、敵を殺傷する戦闘能力に優れた軍人たちだからです。身体が不自由で射撃もできない人たちが邪魔者扱いされるのは、ほとんど自明のことであります。
ですから、戦争は国を守るためとか、国民の生命、財産を守るためにするといわれるのですが、実際の結果は明らかにその逆となっているケースが少なくないのです。したがって、ひとたび戦争にでもなったらもはや取り返しがつかないことは、広島、長崎の例を想起するまでもありません。国民の存亡どころか人類の生存自体が危機に瀕することは、容易に予測できることではないでしょうか。したがって、戦争することによって、いったい誰から誰をどのように守るかという問題は、平和の問題を考える場合に真剣に考慮する必要があります。」
沖縄戦で、沖縄師範学校在学中に学徒召集をされ、九死に一生得た大田昌秀さんの自らの体験から得て哲学です。現代の戦争の本質をついています。
「軍備拡大」「核保有」を主張する政治家にこそ考えてほしいお太田昌秀さんの提言です。
いのちとうとし
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