廃棄物として処分された大量の被爆石
昨年実施されたサッカースタジアム予定地の発掘調査で、貴重な旧陸軍の施設跡が出土し、その保存を求めて活動したことは、このブログでも何度か紹介しました。
全体の保存を求める要望に対し、広島市は「一部切り取り保存をする」方針を発表しました。そして今年に入り、その遺構が基町の子どもプール横にある「馬蹄碑」周辺に整備する計画を明らかにし、市民意見を求めました。
「一部保存」しか実現しないことが明らかになった時期、私が広島市の担当者に「「撤去される敷石などの被爆石は、どうなるのですか」と問うたところ、「廃棄物として処分します」との回答でした。
この回答にびっくりした私は、「貴重な被爆石ですよ。平和教材やさまざまな活用方法があると思うので、ぜひ保存して活用する方法を考えてください」と再三にわたり強く要望し、話し合いの場をつくるよう求めてきました。
その話し合いが、ようやく今月16日に実現しました。
そこに提示された広島市の資料は次のとおりです。
旧軍施設被爆遺構・切り取り石畳片の活用に関する資料 石畳の総数 約800枚 現地にそのまま保存される石畳 約350枚 切り取った3個所の遺構の石畳 約 40枚 予備的に保管している石畳 約 20枚 |
広島市の担当者からは、「予備的に保管している石畳の活用方法に何かアイディアがあれば意見を出してください」との提起です。
少し意見交換をしましたが、私にはこの資料を見た最初から、解明しなければならない疑問がありました。私たちが話し合おうとしている「被爆石」として活用できるのは、「予備的に保管されている約20枚」だけなのです。
そもそも「予備的の保管している石畳」とはどういう意味かです。話し合いの冒頭、広島市が「活用方法として何か提案があれば、示してほしい」といった石畳は、たったの20枚だけでした。さらにやり取りで明らかになったのは、この20枚も被爆石として活用するのではなく「①サッカースタジアム予定地に作るモニュメントに1ないし2枚を使う。②切り取り保存する意向の整備の再石畳が壊れた時の予備のため」を目的としての保管していることでした。
モニュメントの構想もまだ決まっていませんし、遺構整備も進んでいませんから、この20枚のうち、何枚が実際に被爆石として活用できるのか、はっきりしていないのですから、そもそも「活用方法」について、現時点で話し合う余地など全くなかったのです。
さらに最も根本的な問題は、資料には、約800枚あった石畳のうち約410枚しか、その使途が明らかにされていないことです。資料では明示されていない残りの約390枚は、どうなったのかということです。そのことを訊ねると「すべて廃棄物として処分しました」との回答です。
約390枚の被爆石が、その貴重さも活用方法も充分に検討されないまま「ゴミ」として処分されてしまったのです。大切なことなので繰り返し確認しました。「広島市は、被爆石と知りながら390枚を処分したのですね」「そうです。」と答え、さらにちんぷんかんぷんの「記録保存することになっていますから、記録はきちんと保存しています」の発言が繰り返されたのです。記録保存は、あくまでも「遺構」としての記録が残るだけです。どんなに立派な記録が残ったとしても「被爆石」そのものを破棄すれば「被爆石」としての価値は無くなってしまうことが理解できないのでしょうか。私は、何度か「スポーツ文化祭担当だけなく平和推進の担当者も交えて十分に協議して下さい」と繰り返し求めてきましたのですが。
これでは話し合いを続ける意味がありません。最後に「広島市は、貴重な被爆石を390枚も廃棄処分した事実だけは、今日の話し合いで確認します」と述べて話し合いの場は終了しました。
昨年早く時期から「遺構としての保存は難しくても、撤去される石畳は、被爆石として貴重なものなので、活用の道を探ってほしい」と問題提起したものとして、この結末にはただただ愕然とするというか怒りを覚えるばかりでした。
かつて本庁舎の建て替えをする時、旧庁舎の被爆石を保管し活用してきた広島市が、おなじ「被爆石」をなぜこんなにも簡単にゴミとして処分してしまったのか、広島市の被爆問題に対する姿勢が厳しく問われると思うのは、私だけでしょうか。
いのちとうとし
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