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2022年1月 6日 (木)

核廃絶運動のこれから (2) ―――転換期を迎えているのではないか?―――

核廃絶運動のこれから (2)

―――転換期を迎えているのではないか?―――

 

前回は、被団協の未来を考えてみました。これまで被団協が果してきた掛け替えのない役割は、これからも誰かがどのような方法になろうと継続して果す存在が必要であることを説明しました。同時に、被爆者の集まりである被団協は、今後会員数が減る組織であることを視野に入れなくてはならないと現実的な対策はできないことも指摘しました。

 となると、一つの可能性は、核廃絶運動や平和運動の一部としての被団協としての今後を考えることなのですが、昨年のお正月には「新たな決意で核のない世界を目指そう」と題して、6回のシリーズでこれからの運動の一つの可能性を示しました。再度お読み頂ければ幸いです。一回目のURLは、ここをクリックして下さい。

そこでもう一つの問題を考えざるを得ないのです。それは、核廃絶運動そのものが解決しなくてはならない大きな課題のあることです。この点については、このブログで2019年の7月から10月にかけて、8回のシリーズとして取り上げました。中でも、2019821日にアップした5回目では、核廃絶運動の直面する課題を整理しておきました。

ここに、要点だけを再掲します。

 

     (A)日本の平和運動は、国際的運動だった。 

別の言い方をすると、日本政府を説得し政府の方針を変えさせるという種類の運動ではなかった、と言って良いでしょう。

 

     (B)国際的な貢献にしても、日本の運動が自ら目標を掲げて世界の同志に呼び掛けた結果として国際的な目標の達成につながったのではなかった。

ここで注意が必要です。「だから日本の平和運動は駄目なのだ」といった、評価の問題に摩り替えないで下さい。そんなことは言っていません。国際的な市民運動の全体像を見ると、それぞれの地域や歴史等の複雑な要素が絡み合って、役割分担が決ります。日本の役割分担には、このような目標設定や、計画立案が入っていなかったという事実を虚心坦懐に見詰めることが自分たちの力を知る上で大切だという点に留意して頂きたいのです。

 

 (C)原発についての考え方の違いが、運動も野党も分裂させている。

もう56年前 (注 2019年の記事ですので注意して下さい。) になってしまいましたが、当時の原水禁運動が分裂した原因の一つがこの点でした。そのしこりは、今でも続いていますし、参議院選挙でも明らかになったことの一つは、野党共闘の障害の一つがこの点なのです。

 

2019年の問題提起ではこの後、原点に戻ることの大切さと、そこを出発点にした「王道」を歩むという筋道を描いたのですが、今回は現実がもっと厳しいという指摘を挿入します。

 それは、核廃絶運動・平和運動の中で、リーダー的役割を果してきた労働組合の組織率が下降傾向であることです。厚生労働省による次のグラフを見て頂ければ一目瞭然です。

Photo_20220105213201  

厚労省ホームページから

国際的な成果から考えてみると、世界的に圧倒的多数の国々、市民社会、医師や弁護士等の専門家、その他多くの良識ある市民や団体が力を合わせることで、核兵器禁止条約は成立しました。その次の段階として核保有国や各依存国に批准をさせるという大きな仕事が残っています。

 日本に限って考えると、日本政府に批准させる責任は私たち日本国民にあります。そのために、我が国の核廃絶運動・平和運動が新たな力を結集して事に当たらなくなくてはならないのですが、被団協のメンバー減少に象徴されるように、運動の牽引役をすべき組織の力には陰りが見えています。

 一つには、労働組合の組織率に代表される運動の衰退です。敢えて「衰退」という言葉を使うことで危機感を表現しているのですが、今までのような力が発揮できない場面が増えているのではないでしょうか。その労働組合の組織率はかつては、35%もの組織率だったにもかかわらず近年では、20%を切っています。

 同時に世界に打って出ることを得意としてきた平和運動が、日本政府を直接動かし、核禁条約を批准させるという、国内政治そのものに関わる仕事を始めるとなると、運動そのものの方向転換も必要になりますので、時間が掛かるかもしれません。

 お正月早々、マイナス思考に陥ってしまって残念だとお考えの方も多いかも知れません。しかし、ジャンプをするためには一度膝を曲げなくてはならないように、新たなエネルギーを得るためには、何歩か下がったところからの客観的かつ冷静な現状分析から始めることが必要です。それが、夢を見続けるのか、現実を変える行動を計画するのかの違いだと思います。

 ではどうすれば良いのか? ぜひ、皆さんに考えて頂きたいのです。

 [202216日 イライザ]

 

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