ドイツからの便りーその2 「ドイツの核兵器禁止条約締約国会議への参加」
今日は、「ドイツ新政権が核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバー参加する」についての私の質問に対する福本さんの答えを原文のまま掲載します。
Q.1 連立協定に盛り込まれたのは、どの党の影響が一番有ったのでしょうか。それと、協定では、どのように記載されているのでしょうか。
協定には、連合体(NATOのことですね)と調整して、オブザーバーとして条約の意図を積極的に追っていく、とあります。
3党共同でその方向で連立協議をしたということですが、特に緑の党、自民党にその意向が強かったと思っています。交渉中に、緑の党のトリティン元環境大臣(その時、国会議員団の外交責任者でした)に、新政権成立後は、自民党のラムスドルフ外交担当に、外国人記者協会との会見で小生が直接質問して聞いています。
Q.2 このことについての、国民の受け止めはどんな感じでしょうか。
ドイツメディアはまったく報道していません。市民も知りませんし、まったく関心ありません。
Q.3 「今後、NATO内で要請して承諾を得ることを考えているようです。」とありますが、承諾を得られない可能性はあるとお考えですか。もし承諾が得られなかった場合には、オブザーバー参加しないということになるのでしょうか。
時間かけて、納得してもらうように交渉すると理解しています。
Q.4 それから、確認ですが、MATOに配備されている核兵器は150個、ドイツにはそのうちの数十個が配備されていると思っていますが、間違いないでしょうか。
ドイツには、ブュヒェル空軍基地に20前後あるはずです。これは、ドイツ空軍の基地です。正確な数値は公表されていません。これは、戦場で使う戦術的核兵器だけです。
それからトリティン氏は、核兵器の使用はロシアの国境まで、つまりNATO加盟国域内に限定したいといっていました。ただそれは、連立協定には記載されていません。
2021年1月26日付沖縄タイムス
Q.5 もう一つ、広島の市民運動で話題になったことですが、「ドイツは、最近配備されている核兵器を運搬するための戦闘機の近代化を進めている」ということです。ここからは、私の疑問ですが、そもそもNATOに配備されている核兵器は、アメリカが保有する物であり、仮に運搬、使用するということであれば、アメリカが決定する事であり、アメリカの戦闘機もしくはロケットで発射されることになると思っています。ドイツ空軍の近代化がもし進められているとしたら、この核兵器配備とは別で、ドイツの兵器が古くなったための措置だと思うのですが、もし何か情報があれば教えてください。
核兵器のほうは、すでに米国が近代化しました。戦闘機は現在、欧州で開発されたトルナド戦闘機が配備されています。それを米国のF19に切り替えるための納入契約が前政権でまとまっています。
この核兵器はドイツ軍がNATO軍として使用します。ドイツ(西ドイツ)は、シュミット元首相がブラント政権下で国防大臣になった時に、西ドイツが核兵器を使用できない限り、西ドイツの主権がなくなるとして、ドイツ空軍がNATO軍として使用することを主張して、米国を押し切ったとされます。
ドイツは、正確には西ドイツですが、NATOに加盟する時に、憲法に相当する基本法を改正して、ドイツの防衛は集団防衛を基本とすることが記載されています。さらに戦争兵器管理法において、ドイツは核兵器の製造、保管、使用はできないが、連合の枠内(つまり、NATOの加盟国)としては、核兵器を製造、保管、使用することができることになっています。
ただドイツ外務省と国防省は、ドイツはNATOの核抑止力政策の一環で核兵器を保管しており、ドイツがNATOの一員として核兵器を製造すること、使用することは考えられないとしています。
この点はドイツでも、知らない人の方が多いですが。
最後のこんなことが付け加えられていました。
そうですね、今回のオブザーバー問題ですが、外国人記者会でも核兵器禁止条約の問題を取り上げるのは小生くらいです。日本の記者がきていても、誰も核兵器禁止条約の問題は質問しません。
福本さん、貴重の情報提供ありがとうございました。
いのちとうとし
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