核廃絶運動のこれから (1) ―――被団協の果してきた役割―――
核廃絶運動のこれから (1)
―――被団協の果してきた役割―――
明けまして、おめでとうございます。新年ですので、私たちの目標である核兵器の廃絶のために、今後どのような取り組みをすべきなのかについて、改めて、と言うことは初心に戻って考えたいと思います。
昨年12月26日には、坪井直さんの遺志を継ぐことをテーマに、「情理を尽くす」ためには「理」に力を入れた手段が必要だと論じました。特に「広島・長崎講座」という具体的な提案をしたのですが、今回は、スコープを広げつつ、同時に核廃絶運動が直面している問題を整理した上で、新たな視点から考えたいと思います。
《被団協が果してきた役割》
坪井さんが亡くなられて、私たちに改めて突き付けられた冷厳な事実は、人間は誰でもいつかは死ぬ存在だということです。日頃はあまり意図的には考えないことですし、坪井さんのように長寿で、日常的にも人一倍お元気で活動的な方を目の当たりにしていると、人間が死ぬ存在であることを忘れがちになります。
でも、坪井さんが亡くなられた結果として、被団協の会員は確実に一人減ったのです。そして、被団協が原爆による被爆をした方々の組織である以上、その会員数が増えることはありません。これから何年先のことかは分りませんが、今のままでは、被団協の会員はやがてゼロになるのです。
その結果として、私たちが心配しなくてはならないことがいくつかあります。被爆者の皆さん個人個人の果してこられた役割としても大切なのですが、今回は「被団協」という組織の問題として考えてみましょう。
一つには、被爆の実相と被爆者のメッセージを後世に伝えるという仕事は、被団協の主要な使命の一つなのですが、それについては、前回「広島・長崎講座」の勧めという形で問題提起をしておきました。
二つ目は、私たちが社会・世界を考えるときに、基準とすべき考え方を示し続けてくれた一つの「定点」がなくなってしまうことです。被爆体験という人類初のそして未曽有の歴史の生き証人として、日常レベルで世界の平和を「感じ」、「生きてきた」人たちが、今という時をどう見ているのかは、私たちにとって掛け替えのない基準点だったのです。被団協が仮に消滅してしまったとして、この役割はだれがどのように果して行くべきなのでしょうか。
三つめは、被団協そして被爆者が「核抑止力」であり続けたことをどう継承して行けば良いのかという問題です。1999年の平和宣言では、被爆者の残した三つの大きな足跡の二つ目として、三度目の核兵器使用を阻止したことを挙げています。つまり、被爆者そして被団協は、「核抑止力」を持っていたのです。その被団協がなくなるということは、核抑止力も同時になくなってしまうことを意味します。となると、核兵器の使われる可能性が大きくなるのです。それは、そのまま人類滅亡を意味することになりかねません。
仮に被団協が消滅したとして、それは単に一つの組織がなくなるだけではなく、私たちの住む社会、そして世界の存亡そのものにかかわる大きな問題なのです。それに対して私たちに何ができるのか、どうすれば良いのかを私たちの問題として考えなくてはならないのです。「被団協という組織の問題だから、組織の外の人間が関わるべきではない」という理屈で、済ませてはいけない問題なのです。
消滅しつつある被団協を救うためにはこれまでも様々な試みが提案され、中には実行されたものもあります。例えば、被爆二世の団体と一緒になって活動を継続するようにする、というアイデアがあります。あるいは、原水禁や原水協という団体と一緒になって核廃絶運動の面での継続を図るといった考え方もあったようです。
それぞれ、メリットもデメリットもありますし、その他のアイデアがあるかもしれません。仮に、他の団体と合併するというアイデアを検討するとして、そこにはもう一つ、平和運動、特に核廃絶運動が直面している大きな問題が浮上してきます。次回はそれを見て行きましょう。
[2022年1月1日 イライザ]
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