ヒロシマとベトナム(その29-4)
枯葉剤を念頭にした「化学兵器禁止条約」
1969年にウ・タント国連事務総長が「化学・細菌兵器とその使用の影響」と題する『報告書』を提出し、これを契機に化学兵器・生物兵器の全面禁止についての議論が国連軍縮委員会で行われることになりました。途中経過は省きますが、国際情勢の変化にともなう紆余曲折と長い膠着期間もありましたが、約20年の歳月を経て1992年11月30日の「国連第47総会」において、「化学兵器禁止条約」(化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約)が採択され、1997年4月29日発効し今日に至っています。
ここで今一度、前号11月5日の「その29-2」を思い起こしてください。1969年6月、サイゴンの新聞『ティン・サン』が「枯葉作戦で出産異常激増」を報じ、その秋にアメリカ国立衛生研究所のネズミを使った実験で催奇形性が報告され、そして12月にはアメリカ科学振興協会理事会が「枯葉剤使用即時中止決議」を行っています。
「化学兵器禁止条約」の端緒となったウ・タント国連事務総長の「化学・細菌兵器とその使用の影響」報告は、1969年9月、まさにこの時期に出されているのです。「化学兵器禁止条約」の議論は、米軍の枯葉剤を念頭においていたといって過言ではないと思います。
余談になりますが、ビルマ(現ミャンマー)出身のウ・タント事務総長は、ベトナム戦争時に少年期から青年期を過ごした私の記憶に残っている数少ない国連指導者の一人です。
「化学兵器禁止条約」前文で明確に枯葉剤の使用を禁止
1997年に発効した「化学兵器禁止条約」は193カ国が批准しています。もちろんアメリカも日本もです。
第1条(目的)で、「いかなる場合にも化学兵器の開発、生産、取得、貯蔵・保管、直接的間接的な委譲の禁止」、「使用の禁止」、「使用のための準備活動の禁止」、「他者への禁止事項の活動援助・奨励・勧誘の禁止」を求めています。そして、既に存在する化学兵器や生産施設の10年以内の廃棄と遺された化学兵器の回収・処分を使用国に義務づけています。
(2016年:初めてヒロシマを訪れたグエン・ドクさん)
ところが、これまでも繰り返し述べているように、アメリカ政府は被害者に対する謝罪も補償も放棄したままです。その論拠とされているのが、「化学兵器禁止条約」上、明確に枯葉剤が化学兵器と定義されていないことをもって、「化学兵器ではない」と主張しているのです。
しかし、前文には「戦争の方法としての除草剤の使用の禁止が関連する協定及び国際法の原則において定められていることを認識し、化学の分野における成果は人類の利益のためにのみ使用されるべきである」と、明確に枯葉剤を化学兵器と断じ、禁じています。本文に枯葉剤の記述がないことをもって「化学兵器ではない」とすることは欺瞞、言い逃れ以外なにものでもありません。
古希の抱負
初めての枯葉剤がベトナムにまかれ60年の今夏、被爆県ヒロシマで初めての「エージェントオレンジDay」を取り組みました。来年以降も継続します。
その来年は1992年に「化学兵器禁止条約」が採択されて30周年にあたります。
私ごとですが、1月1日の誕生日、古希を迎えます。
核兵器 & 化学兵器の廃絶! “ヒロシマとベトナム”へのこだわり
平和を基調に 日本とベトナムの相互理解に基づく 互恵的な友好関係を築くために
来年も引き続き、ボチボチと頑張ります。
(2021年12月7日、あかたつ)
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