いつまでも忘却してはならないこと
第6次エネルギー基本計画の結論にしても、COP26に対する政府の発言にしても、この国の政治指導者の劣化度があらためて示された21年だったように思うのです。責任を問われるような政策の転換はしないというのが「尺度」だから、選挙をやっても投票率が上がることは期待できないでしょう。
12月8日は、日本が真珠湾攻撃を行って80年という節目の日ということで、マスコミは様々な特集を行っていました。いつも考えるのは、なんで日本はあの戦争を始めたのかということです。対中国侵略の行き詰まりからということなら、なんでアジアの小さな国々に侵攻したのかというのが、きちんと解らないのです。
友人が「総括しない、反省しない、責任取らないという、この国の『3ない主義』が問題」と話していました。それがなんで戦争したのかということが、解らないことに繋がってきます。総括し、反省し、責任をしっかりしなければ、また「戦争をする国」になるのではなかろうかと思うのです。
同じことは福島第一原発事故にも言えると思います。事故後、様ざまな形の事故調査委員会が設置されましたが、きちんとした報告書が出されたわけでもなく、報告書が国会の場で議論されたということも聞きません。福島第一原発事故から10年、原発事故はなにも解決されていないのに、再稼働も、新増設も、核燃料サイクルもということは許されないのです。
現在の東京電力福島第一原子力発電所(CNNニュースより)
戦後のラジオドラマで、菊田一夫原作の「君の名は」というのがありました。その最初に語られた言葉は「忘却とは忘れ去ることなり。忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ」です。このドラマは悲恋のものですが、災害にしても事故にしても当事者は一生忘れられないことでしょうが、当事者でなくても忘却してはならないことはたくさんあると思うのです。「20世紀に犯した世界の3つの愚行」というタイトルで、どこかに原稿を書いたことがありますが「アウシュビッツ、原子爆弾投下、チェルノブイリ」と書きました。
時は21世紀になりましたが、同じようなことが世界中で起こっています。アウシュビッツに似ているのは香港やミャンマー、アフガニスタンなどで起こっていること。原子爆弾投下では原爆の投下は無いにしても、核兵器所有は憲法に違反しないとする日本、対中国封じ込め政策に協力し核兵器の先制不使用に反対し、敵基地攻撃を正当かするこの国、イラン核合意の緊張。そしてチェルノブイリでは福島第一原発事故です。
テレビに加えインターネットが普及した情報社会にあって、人の記憶や想像力はむしろ退化しているのでは無かろうか。これは国家やマスコミによる巧妙な罠なのでしょうか。
22年は新年早々、ニューヨークの国連本部でNPT(核拡散防止条約)再検討会議が開催され、また核兵器禁止条約の第1回締約国会議が3月22日~24日までオーストリアのウイーンで開催されます。翌23年には、日本でG7サミットが予定されています。岸田文雄総理の地元ということで、広島市での開催が有力視されていますが、世界中の指導者に本気の「ヒロシマの心」を発信しようと思うのなら、核兵器禁止条約批准や先制不使用に反対しないこと、プルトニウム政策からの撤退などをしっかり伝えることではないでしょうか。
年賀状の一文に、「勇気とは立ち上がり。発言すること。また同時に、着席し、耳を傾けることも勇気である」と書きました。これは英国首相だったウィンストン・チャーチルの言葉です。僕はどちらかといえば多弁な方だから、22年はおとなしく寡黙な男になろうと思っています。そういえば岸田総理大臣の就任最初の挨拶は「特技は人の話をしっかり聞くこと」だったようですね。
今年の「新・ヒロシマの心を世界に」の私の担当は、これで終わります。読んでいただきありがとうございました。
木原省治
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コメント
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EUが、原発を、天然ガスと共に、グリーンな投資先として、認定する方針を、発表したとか。
投稿: 匿名希望します。 | 2022年1月 2日 (日) 11時46分
匿名希望さま、コメントありがとうございました。本年もよろしくお願いします。日本の政権もそうですが、EUも原発回帰の動きがありますね。ただ国によって一概にはいえません。今年は福島第一原発事故から11年、福島事故のことが何も解決しない中、「原発は地球温暖化防止に役立つ」という10年以上前から原発推進派が言っていた主張がぶり返したという感じです。
投稿: 木原省治 | 2022年1月 2日 (日) 17時14分