「最高法規」の意味 (3) ----憲法の持つ深みと矛盾が共存しています---
「最高法規」の意味 (3)
----憲法の持つ深みと矛盾が共存しています---
前々回と前回は、一昨年に上梓した『数学書として憲法を読む――前広島市長の憲法・天皇論』で採用した九つのルール、「九大律」をお浚いして、その読み方で98条を読む積りであることを確認しました。さらにそれをもう少し丁寧かつ詳しく説明した「改竄禁止律」を導入しました。
いよいよ98条を読む準備が完了しましたので、本題に入りましょう。その前に、再度98条です。
第98条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守する
ことを必要とする。
《「最高法規」から導かれる「定理」》
憲法98条について見逃し易いのは、「最高法規」としての縛りが掛かる対象は、「法律、命令、詔勅」だけではなく、「国務に関するその他の行為の全部又は一部」も含まれるという点です。森友・加計・桜等に関わる多くの問題、特に安部夫妻を守るための文書の改竄が実は憲法違反だという認識も重要です。
ただし、ここでは憲法とその読み方に的を絞りましょう。98条から導かれる結論を「定理」と呼んだ上で、その証明も付けておきます。
[正文定理 (九大律の①正文律)] 「憲法」として読む対象は、1946年11月3日に公布され、1947年5月3日に施行された(日本語の)日本国憲法である。
[証明] 日本語の憲法が対象であることはわざわざ断るまでもないのだが、問題は、憲法解釈に当って、英文で書かれた憲法が憲法解釈を左右するといった主張が行われてきたことだ。念のため98条を根拠として日本語が正文である理由を述べておく。仮に、憲法の英文訳を「憲法」として読むことにすると、英文と日本語の二つの「憲法」が存在することになる。しかし、日本語の方が「最高法規」であり、それとは違う内容を持つもう一つの憲法があるとすると、それは、元の憲法に反するものになり、効力は持たないからだ。Q.E.D.
一つ注意しておくべきなのは、日本語の憲法と英語訳の憲法とは違う存在だという点です。片方が日本語、そしてもう一つは英語ですので、この二つが違うものであることに異論はないでしょう。さらに「反する」の広義の意味は、「異なる」なのです。(新潮国語辞典、集英社国語辞典等)
[自己完結定理(九大律の8番目である自己完結律)] 憲法を読むに当り、(普通の言葉を使えば)その解釈のために、他の法律や文書を根拠にしてはいけない。
[証明] 98条の規定している「最高法規」とは、我が国を縛っている法体系の中で、憲法による縛りが他の縛りより優先されることを意味する。その解釈に、仮に文書Aという根拠を持ち出すと、その文書Aの力が憲法より優先されるという事実を認めなくてはならない。となると、それは憲法が「最高法規」であるという98条に反する。Q.E.D.
[改竄禁止定理(憲法に関しての改竄禁止律)] 憲法を読むに当り、その字句を改竄することは禁止されている。また、字句は変えずに、字句の意味を変えることは禁止されている。さらに、字句から論理的に導かれる結論も字句同様に、改竄されてはならない。
[証明] 憲法内の字句が改竄されたとしよう。すると、憲法そのものと、憲法の一部が違う、「憲法ダッシュ」という二つの文書が存在することになる。「一部が違う」ということは、「憲法ダッシュ」が元々の憲法に「反する」存在であることを意味する。従って、「憲法ダッシュ」は効力を持たない。Q.E.D.
[系1 (九大律の③一意律)] 憲法内に現れる同一の字句は、同じ意味を持つ。
[系2 (九大律の②素読律)] 憲法を読むに当って、一つ一つの字句は素直に字義通り読まなくてはならない。
[証明] これまでの説明で十分だと思いますので、省略します。
これまでは問題がなかったのですが、次回は、98条と96条の間には大きな矛盾があることを取り上げます。それまでに皆さんにもどんな矛盾なのか考えて頂ければと思います。
[2021年12月16日 イライザ]
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