ベトナムの歴史(その10-2)
日本を救ったチャン・フン・ダオ
三回目の侵攻は1287年です。その話しに進む前に、日本との関わりを見てみましょう。すでに皆さんがお気付きの通り「元寇」です。下の「モンゴル帝国の領土図」と「モンゴル帝国のベトナムと日本侵攻年表」をご覧ください。フビライ・ハンがミャンマー(当時バーモ)、大越(ベトナム陳朝)、占城(チャンパ)、クメール帝国(現在のカンボジア)へと南進侵攻するとともに、朝鮮半島と杭州経由で日本へ、そしてベトナム、ジャワへと侵攻を繰り返していることが分かります。同じ時代にベトナムと日本は共通の敵、モンゴルの侵略軍と戦っていたのです。
(「モンゴル帝国の最大領域」 出典:ウィキペデア)
それを年表に表したのが下の「モンゴル帝国のベトナムと日本侵攻年表」です。
日本への第一次襲来は1274年10月(文永11年)。クドゥン元帥が率いる蒙古・漢軍、高麗軍の軍船1000艘、水夫を含む4万人のモンゴル軍が対馬、壱岐、肥前沿岸を経て博多に襲来しました。その夜、船に戻ったところ「神風」(台風)に見舞われて撤退したと伝えられている「文永の役」です。
第二次襲来は1281年(弘安4年)5月。元・高麗軍・旧南宋軍・モンゴル軍が軍船4400艘、水夫を含め56万人余が同じく対馬、壱岐を経て長門と博多に襲来。日本軍の奮戦と暴風雨に会い撤退した「弘安の役」です。
フビライは翌1282年には早くも第三次日本侵攻計画を立て、軍船建造と水夫募集を始めます。ところが、中国江南地方の活発な海賊活動に手を焼き計画変更を余儀なくされ、続く1283年、84年と日本侵攻計画を建てますが、ベトナム陳朝との戦況が思わしくなく、1285年にベトナム征服を優先させ第二次ベトナム侵攻を行います。しかし、先に見たようにモンゴル軍は敗退します。
二度目の歴史的な戦い「白藤江の戦い」
その後、1287年に第三次ベトナム侵攻を企てますが、1288年の「白藤江(バクダン川)の戦い」でチャン・フン・ダオに壊滅的な敗北を帰し、結果、日本侵攻用に建造した艦船と兵士を失ってしまいます。
チャン・フン・ダオが「白藤江の戦い」で壊滅的な打撃をモンゴル軍に与えたことで、三度目の日本侵攻が不可能になったのです。その意味で、チェン・フン・ダオはベトナムを救った英雄であると同時に日本を救った盟友でもあると言えます。
しかしその後も日本侵攻を諦められないフビライ・ハンは4年後の1292年、高麗に戦艦建造を命じますが、相次ぐ建造により高麗には木材はなく、幾度も徴兵される高麗人の高まる厭戦気分などで建造できる状況になかったといわれています。
そうしたことから日本侵攻ができないなか、陳朝にモンゴル帝国・元朝皇帝に拝謁を求め、病気を理由に断られたことから第四次ベトナム侵攻を準備します。ところが、1294年にフビライ・ハンが死去したため中止され、高麗での戦艦建造も停止、幾度も持ち上がった第三次日本侵攻計画も中止になりました。
次号(1月20日)では、チャン・フン・ダオがモンゴル軍を撃退した「白藤江(バクダン川)の戦い」を紹介したいと思います。“エ!「白藤江の戦い」?” という方もおられると思います。7月号(その5)で938年に呉権が中国南漢軍を破り、「中国1000年の軛(くびき)」を断ち切った 「白藤江(バクダン川)の戦い」を紹介しましたが、その歴史的な場所で、再び日本とベトナムにかかわる歴史的な戦いが展開されたのです。
次回を楽しみにしてください。
(2021年12月22日、あかたつ)
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