広島市「職員の服務に関する宣誓書」-その2
狩前回(19日)のつづきです。今回は広島市の答弁を検証します。
広島市は、宣誓書の内容を変更した時期と理由について、
「被爆の廃墟から復興し、昭和55年1980年に政令指定都市へと発展を遂げたことを機に、熟慮ののち昭和58年1983年に改め、以降40年近くわたり用いており、良い宣誓書との評論もあるところです。」(録音から筆者が起こしたので、完全ではありません)
この説明だけでは、廃墟から復興したこと、政令都市となったことが改正の契機となったことは分かりますが、新しい宣誓書では「なぜ日本国憲法に直接触れる文言を削除したのか」を理解することはできませんので、もう少し広島市の答弁を聞いてみたいと思います。
「宣誓書にある『国際平和文化都市』は、唯一本市だけが掲げるものであり、憲法や地方自治法の理念が流れ込んでいるものと考えています。」とし、上記の経緯を説明し「だから、宣誓書の内容を変更することは考えていません。」としています。
さらに委員の質問に対し、「99条は、職員になった時必然的に、憲法を擁護することになっておりまして、職員はその意識を持っていると考えている」「「そもそもですが、宣誓書に宣誓いただく前に、採用された職員には事前に『採用に当たって』の資料を配布している。その資料には当然、公務員の基本理念という『憲法を尊重する』旨記載しているので、事前の周知を図っている。」とし、さらに「『国際平和文化都市』まちづくりの最高目標を都市像として掲げている。そこには当然憲法の理念というものが込められているものと考えています。」「だから当然、職員はもちろん市民もその意識を持っているというのです。」との答弁。
さらに委員から「他都市や裁判所職員までもが、わざわざ憲法という言葉を持ち出して、服務の宣誓の中に書き込んでいるということをきちんと考えなければならない」と質しても、同じ答弁が繰り返され「本市として内容を変更することはない」とし、質疑は打ち切られました。
この請願は、「継続審査」扱いとなりましたが、今後、実質的な継続審査が行われることはないようです。
この広島市の説明を何度聞いても、「なぜ日本国憲法の尊重擁護」の文言が削除されたのか、理解することはできません。
広島市がいうように「国際平和文化都市」の構想の中に憲法の理念が盛り込まれているとしても、99条の「公務員の憲法尊重擁護の義務」も含まれていると解釈するのは、無理があります。
他自治体で、広島市のように「日本憲法の尊重擁護」が明記されていない「「職員の服務に関する宣誓書」があるのか、調べてみました。
県内で調べたのは広島県と広島市を除く13市だけですが、全自治体で、若干の表現の違いはあるものの「私は、ここに主権が国民の存することを認める日本国憲法を尊重し、かつ、これを擁護することを厳かに誓います。」と憲法を尊重擁護することが明記されています。
広島市が「政令市になったのを機に」としていますので、全国19の政令都市(広島市を除く)の「職員の服務に関する宣誓書」も調べましたが、広島市のように「憲法尊重擁護」を宣誓しない自治体はありません。
国家公務員は、「職員の服務の宣誓に関する政令」に定められた「私は、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき責務を深く自覚し、日本国憲法を遵守し、並びに法令及び上司の職務上の命令に従い、不偏不党かつ公正に職務の遂行に当たることをかたく誓います。」を宣誓することになっています。
全自治体を調べたわけではありませんが、広島市の「職員の服務に関する宣誓書」がいかに異質なものかがわかると思います。
前回も紹介しましたが、公務員はこの宣誓をしなければ、服務につくことができないほど重要なものです。それは、公務員が、全体の奉仕者(憲法第15条)として行う服務が、常に憲法が保障する人権を侵害する恐れがあることから、人権保障を定める憲法を守るということ、さらに99条に定められた「憲法尊重擁護義務を負う」ことを宣誓するという重要な意義を持っているからです。
広島市がどうしても「宣誓書」の中に「国際平和文化都市」の文言を入れたいのであれば、改正前の宣誓書
「私は、ここに主権が国民の存することを認める日本国憲法を尊重し、かつ、これを擁護することを厳かに誓います。
私は、地方自治体の本旨を体するとともに公務を民主的かつ効率的に運営すべき責務を深く自覚し、全体の奉仕者として、誠実かつ公正に服務することを固く誓います。」
の後半下線部分のみを変えればよかったことです。
「職員の服務に関する宣誓」の最も重要な「憲法尊重擁護」の文言を削除した広島市の「宣誓書」は、憲法に違反したものだといわざるを得ません。
これを調べていて、広島市の「職員の服務の宣誓に関する条例」にもう一つの疑問が出てきました。これは次回(明日)紹介します。
いのちとうとし
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